悪いクチコミを書かれたときの対策。消費者の思考をコントロールすれば良い

自社のECサイトの他、楽天やAmazonで商品を販売していると、悪いクチコミが書かれてしまうことがあります。

星の評価で1をつけられてしまうこともあります。

現在の消費者は他者のレビューを参考にする人が多いですから、こうした低評価を放置すると売上減少を招きかねません。

とはいえ、販売側が消費者のレビューをコントロールするのは難しいものです。

そんなときは、そのレビューを閲覧している未来の顧客の思考をコントロールしましょう。

悪いクチコミの影響が大きい商品と小さい商品

まず最初に知っておいてほしいことは、商品の特性によって、悪いクチコミの影響の出方は異なるということです。

一般に「嗜好の偏り」が小さいとされるもの、つまり個人的な好みがあまり関係ない商品ほど、悪いクチコミの影響は大きくなります。

スマホの充電器とお菓子であれば、スマホの充電器のほうが悪いクチコミを書かれたときに、売れなくなる可能性が高いのです。

評価がバラついているUSBメモリは売れない

実際にウエストバージニア大学のスティーブン・ヒー教授らの実験によっても、このことは証明されています。

この実験では113名の大学生に、2つの商品を見せてどちらが良いかを選ばせました。

このとき、参考情報として、オンラインレビュー(星1個~10個までの評価)を見せています。

実験の結果、USBメモリのような個人的な好みが関係ない商品ほど、レビューのバラつきが悪影響を及ぼすことが分かりました。

つまり、星10の最高評価もあれば星1の最低評価もあるようなUSBメモリは、選ばれにくかったのです。

それよりも、最高評価も、最低評価も少なく、平均的な評価を得ているもののほうが選ばれたのです。

悪い評価を見たときに消費者が考えること

なぜUSBメモリのような商品では、レビュー評価のばらつきが大きいと、選ばれにくくなるのでしょうか?

それは、USBメモリのように、個人の好き嫌いよりも、容量などのスペックで判断されがちなものに関しては、消費者が無意識に「皆が同じ基準で判断するはずだ」と考えるからです。

つまり、「デザインの良し悪しで判断される商品なら評価がバラつくのは当然だけど、スペックで判断する商品の評価がバラつくのは品質にムラがあり、不良品が混ざっているからではないか?」と考えてしまうということです。

もし、自社で扱っている製品が、電子機器のようにスペックで選ばれがちなものであるのなら、悪いクチコミが書かれている原因を究明することが必要です。

品質そのものに原因があるのなら、それを改善する必要があります。そうしない限りは定期的に悪い評価がなされますし、それによって売上も伸びません。

商品に問題がないのに嫌がらせで悪いクチコミを書かれているなら、削除を要請するか、返信によって自社や製品に非がないことを説明するべきです。

悪いクチコミの影響を抑える方法

今回の実験では、絵画や音楽アルバムの選択もさせていますが、これらの商品に関しては、低い評価があっても、高い評価がある商品であれば、選ばれにくくなるということはありませんでした。

その理由は絵画や音楽は人によって好みが異なるものだからです。消費者は「評価が割れるのは当たり前」と考えて、悪い評価があったとしても、気にしないのです。

とはいえ、消費者の中には、他のユーザーのレビューを気にする人も一定数います。

映画や食べ物のような、個人的な好みが分かれるものであっても、たった一つの悪いクチコミがあるせいで、購入を控えてしまうこともあります。

このようなパターンを防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?

それは最初から「これは好き嫌いが分かれる商品です」と宣言してしまうことです。

それによって、消費者の思考を「人によって嗜好がバラバラになりやすい商品なのだな」という状態に誘導するのです。

消費者の思考をコントロールする実験

さきほどのスティーブン・ヒー教授らは別の実験も行っています。

こちらの実験では、2種類のアイスクリームサンデーと、それに対する消費者からのレビューを見せ、どちらが欲しいかを約300人の実験参加者に選択させています。

レビューは高評価と低評価にバラつきがあるパターンと、平均的な範囲に収まっているパターンのどちらかを見せました。

さらに参加者を以下の2グループに分けました。

  • 嗜好が似ている条件:「レビューを書いた人たちは似たような好みを持っています」と伝えられる
  • 嗜好が異なる条件:「レビューを書いた人たちはバラバラの好みを持っています」と伝えられる

これらのグループの選択を分析したところ、嗜好が似ている条件に割り当てられた参加者は、総合的な評価が高い商品でも、評価のバラつきがあると購買意欲が下がる傾向が見られました。

一方で、嗜好が異なる条件に割り当てられた参加者においては、バラつきのあるレビューであっても、総合したときの評価が高くなる商品の購入意図が高まりました。

また、「評価のバラつきの原因は何だと思うか?」という質問に対し、「評価した人間の個性によるもの」と答える確率が高くなることも分かりました。

評価のバラつく原因が、商品の品質の問題だとは思いにくくなるということです。

「帰属理論」と利用して消費者に答えを提示してしまう

以上の実験から言えることは、悪いクチコミを書かれる可能性がある商品、つまり嗜好の異なる商品を販売するのであれば、最初に「好き嫌いが分かれる」と宣言してしまうことが有効ということです。

結果の原因を何に求めるかという心の過程を心理学で「帰属理論」といいます。

この理論によれば、人間は出来事や現象を目にしたときに、「それは何が原因で起こったのか?」を自然に推測しようとする心の働きを持っているとされています。

たとえば、ある製品のレビュー評価がバラついている場合、消費者は「なぜ評価が割れているのか?」と考え、その理由を探ろうとします。というより探らずにはいられないのです。

一度でも心に生じた「なぜ?」が解消されなければ、気持ち悪いからです。

つまり、悪いクチコミを見た消費者は、意識的か無意識的かに関係なく、ほぼ確実にその原因を考えるということです。

このときの原因の考え方には、大きく2つの方向があります。

ひとつは「製品そのものに問題がある」と考える「製品への帰属」、もうひとつは「レビューを書いた人たちの感じ方や好みがバラバラなんだ」と考える「評価者への帰属」です。

ここまでの説明でお分かりの通り、「製品への帰属」がなされてしまった場合には、その商品は売れなくなるのです。

そうなる可能性を下げるためには、「評価が割れるのは人によって好みが分かれる商品だから」と、最初に答えを提示してしまえば良いということです。

悪いクチコミの商品を試すことを楽しい「挑戦」と思わせる

ちなみに、このような商品を選んだ消費者は、その行為によって「自分が好奇心旺盛でオープンマインドな人間だと感じられる」と答える傾向が高いことも分かっています。

なので「新しい味に挑戦してみてください」といったような、好奇心を刺激する文言も、プラスに働く可能性があるといえます。

特に観光地のような、人々が開放的になりがちなところではより有効な戦略となるかもしれません。

経営者やマーケターが注意すべきことは、悪いクチコミが書かれたという事実よりも、それを見た消費者がその原因をどこに帰属させるかというその先の現象なのです。

参考文献:Stephen X. He, Samuel D. Bond. (2015). Why Is the Crowd Divided? Attribution for Dispersion in Online Word of Mouth.