企業でもフリーランスでもSNSを使って情報を届けようとするとき、どのプラットフォームを選ぶかはとても重要な問題です。
Twitter(現X)、Instagram、TikTokなど、多くの選択肢がありますが、それぞれの特徴に合わせた戦略を立てるのは簡単ではありません。
そんな中、どのSNSでより多くの「いいね」や「コメント」を得られるのかをデータで比較した、UAIビジネススクールのトッド・ペズッティ博士らの研究が発表されました。
SNSごとのバズりを分析
この研究では、まずSNS上で注目されている10の有名ブランドが選ばれました。
選定されたブランドには、Starbucks、Gucci、GoPro、Zara、Disneyといった、多様な業界にまたがる企業が含まれています。
研究の対象となったのは、これらのブランドがInstagram、TikTok、X(旧Twitter)、に投稿したコンテンツです。
それぞれのブランドが異なるプラットフォームでどのような反応を得ているのかを分析することが目的でした。
分析対象
投稿ごとのエンゲージメントは、「いいね」の数と「コメント」の数を足し、それをブランドのフォロワー数で割ることで算出されました。
つまり、単に数字の多さではなく、フォロワー数に対する反応の割合から、ユーザーの関心度合いを測っているということです。
また、投稿された内容についても内容分析が行われました。投稿に含まれる単語の出現頻度を分析することで、投稿がどのような目的を持っているかを以下の3パターンに分類しました。
- ブランド告知型:新商品の紹介やキャンペーンの告知などを伝える投稿
- ブランドイメージ訴求型:商品の魅力やライフスタイルの提案など、ブランドの良さや価値を印象づけるような投稿
- 感情訴求型:愛や驚き、恐れといった感情を呼び起こす表現を用い、ユーザーとの心理的なつながりを意識した投稿
こうした分類には、PythonのNLTKという自然言語処理ライブラリが使われ、専門的に分析が行われました。
最もバズったのはTikTokだった
分析の結果、最もエンゲージメントが高い(=バズった)のは、TikTokということが分かりました。
たとえば、カメラブランドであるGoProの投稿では、海中でのダイビングや雪山でのスキーなど、アクションカメラを使った短い動画が投稿されており、これらが多くの「いいね」や「コメント」を集めていました。
同様の投稿をInstagramやTwitterでも行っていましたが、TikTokでの反応が圧倒的に良好でした。
何を投稿するかより、どのSNSに投稿するかが重要
さらに、この研究では、投稿内容の違いがエンゲージメントに与える影響はそれほど大きくないこともわかりました。
投稿する内容が、告知型、イメージ訴求型、感情訴求型のどれであっても、反応の違いはそれほどなかったのです。
それよりも、どのプラットフォームに投稿するかによる違いのほうが圧倒的に大きかったのです。
たとえば、Gucciが同じ製品(Gucci Marmontバッグ)についての投稿を3つのプラットフォームに載せたときの「いいね」の数は、Twitterでは257件、Instagramでは17,500件だったのに対し、TikTokでは73,400件という大きな差が出ていました。
なぜTikTokが最もバズるのか?
なぜ同じ内容の投稿でも、TikTokの最もバズりやすかったのでしょうか?
その理由は、TikTokというプラットフォーム自体の性質にあります。
【理由1】ユーザーの行動履歴によるパーソナライズ
TikTokは短い動画を中心としたSNSで、ユーザーがスワイプするだけで次々と動画を視聴できる仕組みになっています。
このような設計により、視覚的なインパクトが強いコンテンツや、短時間でメッセージが伝わる動画は特に目に留まりやすく、多くの反応を引き出しやすいのです。
また、TikTokのアルゴリズムは、ユーザーの興味や行動履歴に応じてパーソナライズされた動画を「おすすめ」欄に表示します。
そのため、ブランドの投稿がフォロワー以外のユーザーにも広がりやすく、自然とエンゲージメントが高まる傾向があります。
これは、基本的にフォロー関係中心の表示が行われるInstagramやTwitterと大きく異なる点です。
【理由2】ユーザーが参加しやすい文化
TikTokでは音楽やエフェクト、ハッシュタグチャレンジなどを通じてユーザーが投稿に参加しやすい文化が根付いていることもエンゲージメントを高める要因といえます。
こうした文化が、ブランドの動画に対する「いいね」や「コメント」だけでなく、リミックスやデュエットといった形での関与も活発にするのです。
このような双方向的な仕組みが、ユーザーの反応を促進していると考えられます。
【理由3】親しみやすく見せられる設計
また、TikTokは娯楽性やテンポの良さが重視されているため、ブランドの投稿でも商品紹介を堅苦しく伝えるのではなく、実際の使用シーンを面白く、親しみやすく見せることが可能です。
たとえば、GoProのようにカメラの使い方を迫力ある映像で見せる場合、テキストや静止画よりも短尺動画のほうが魅力が伝わりやすく、ユーザーの感情や関心を引きつけやすくなります。
このように、TikTokの仕組み・文化・拡散性が、同じ内容の投稿でも他のSNSより高いエンゲージメントにつながる大きな要因となっているのです。
フォロワーの少ないブランドでもバズらせることは可能
まだTikTokを本格的に活用していない企業や個人も多いかもしれませんが、今こそ見直すタイミングかもしれません。
フォロワーが少ないブランドでも、TikTokではバズっているケースは多々あります。
これは、TikTokでは「フォロワーの多さ」よりも「投稿の内容や見せ方」が重要だということを示しています。
言い換えれば、知名度が低い小さなブランドや個人でも、工夫次第で多くの人に届くチャンスがあるということです。
これからSNSを使って発信力を高めたいと考えている企業は、どんな投稿をするかだけでなく、どのプラットフォームを選ぶかを意識してみてください。
TikTokのようなユーザーの興味にフォーカスしたアルゴリズムが設定されたSNSでは、投稿内容次第で全ての企業に拡散のチャンスがあります。
バズるための第一歩は「どこに投稿するか」を選ぶことから始まっています。
参考文献:Pezzuti, T., Leonhardt, J. M., & Warren, C. (2022). Certainty in Language Increases Consumer Engagement on Social Media.