化粧品のECサイトのリピート購入率を高めるデザイン品質

配色を変えたり、バナーを作り直したり、構成を見直したりと、手間をかけてウェブサイトのデザインをリニューアルしたのに、数字に大きな変化が表れない。

その原因がどこにあるのか分からず、改善の手ごたえを感じられないまま、次の施策を模索している企業も多いかと思います。

特に化粧品業界のようにブランドが乱立し、商品の差別化が難しい分野では、顧客の購買体験そのものが競争力になります。

価格や成分だけではなく、「このサイトで買いたい」と思わせる導線づくりが、リピーターを生み出す鍵になっているのです。

実際に、多くの消費者は最初の数秒でサイト全体の印象を判断し、信頼できるかどうかを無意識のうちに決めています。

そのため、ビジュアルの美しさだけでなく、情報のわかりやすさや使いやすさ、快適な閲覧体験といった設計の細部までが、大きな意味を持ってきます。

では、どのようにウェブサイトのデザインを改善すれば良いのでしょうか?

デザイン品質とリピート購入の意図

化粧品のECサイトにおける「デザイン品質」が、顧客の信頼感や再購入意図にどのように影響するのかを実証的に明らかにした、サスカチュワン大学のシェイダ・アフマディ博士らの研究があります。

この研究では、化粧品のECサイトの利用経験がある374人を対象にアンケート調査が行われました。

質問項目は、ウェブサイトの見た目の魅力や構成のわかりやすさ、情報の正確さや豊富さ、使いやすさ、検索機能の利便性、ページの表示速度など多岐にわたっています。

また、実際にそのサイトで買い物をした際の満足度や、その後も同じサイトで購入したいと思うかという「リピート購入の意図」についても質問されています。

得られた回答は、構造方程式モデリング(SEM)によって分析され、アンケート項目の複数の要素がどのように関係し合っているのかまで検証されました。

デザイン品質が顧客の心理や行動に与える影響

この研究の結果から明らかになったのは、ウェブサイトのデザイン品質が顧客の心理や行動に対して持つ影響の大きさです。

まず、サイトのデザインが良いと、ユーザーはそのサイトに掲載されている情報に対して高い信頼を抱きやすくなることが分かりました。

分かりやすく整理されており、内容も豊富であると感じたとき、そこに掲載された情報の質が高いと評価されるのです。

また、デザインが美しく、レイアウトが整っており、ページ移動や検索がスムーズにできるようなサイトは、見ていて楽しいという感情を引き出すことも分かりました。

この「楽しさ」も重要な要素であり、ユーザーがそのサイトで過ごす時間を心地よく感じることで、全体的なユーザー体験が良いものとして記憶されます。

このようにして高められた「満足度」は、さらなる信頼へとつながり、最終的に「もう一度このサイトを使いたい」「人にも勧めたい」といった再購入意図を生み出すという、一連の流れが明らかになりました。

つまり、ウェブサイトに初めて訪れたときの印象や操作体験が、そのまま「信頼してもいい場所かどうか」という判断につながり、そしてそれがリピート購入を促すということです。

化粧品ECサイトのリピート購入率を高めるために必要な「質」

この研究から分かるように、見た目の良さだけでは顧客の心をつかむには不十分であり、「総合的な体験の質」が重要です。

確かに、洗練されたデザインや美しいレイアウトは第一印象として効果的です。

しかし、実際に顧客がサイトを使ってみたときに、動作が遅かったり、情報が見つけにくかったりすると、それだけで満足度は大きく下がってしまいます。

どれだけ視覚的に魅力があっても、使いにくければ「もう一度使おう」とは思ってもらえません。

この研究では、特に検索システムの使いやすさ、ページの表示速度、情報の充実度といった要素が、顧客満足や信頼に強く影響していることが示されています。

たとえば、製品の詳細ページがすぐに開けて、必要な情報に簡単にアクセスできるようになっていると、顧客はそのサイトを「信頼できる情報源」として評価しやすくなります。

また、不要なアニメーションや複雑な構造がないシンプルな操作設計は、ストレスなく閲覧できる体験を生み出します。これらは、見た目以上に重要な要素だといえます。

さらに、背景色や文字サイズ、フォントの種類といった細かいデザインの工夫も、顧客が感じる「快適さ」に影響を与えます。落ち着いた配色や読みやすい文字は、サイトの印象を穏やかにし、長時間の閲覧を促す効果があります。

また、画像や動画といったマルチメディアコンテンツを効果的に取り入れることで、サイト全体に動きと臨場感が加わり、顧客の「楽しさ」を高めることにもつながります。

重要なのは、こうした要素を個別に見るのではなく、顧客がサイトを通じて体験する全体の流れとして設計することです。

情報を探す→製品を見る→購入を検討する→カートに入れる→決済する、という一連のステップのなかで、どこにもストレスを感じずに進めるようになっていることが理想です。

その体験がスムーズで満足度の高いものであれば、自然と「また使いたい」「他の人にもすすめたい」という気持ちが生まれるのです。

参考文献:Sheida Ahmadi, Mohammad Reza Karimialavije, et al. (2015). The effect of website design quality on the customer’s trust and repurchase intention from cosmetic websites.