飲食店のSNSマーケティング。売上アップを成功させるための5つの要因

近年では、大手チェーンだけでなく、小さな個人経営の飲食店もSNSを通じてファンを増やし、売上を伸ばすケースが増えてきました。

SNSは、広告費をかけずに多くの人にお店を知ってもらえる手段として非常に魅力的です。

しかし、ただメニューの写真を投稿したり、キャンペーンをお知らせするだけでは、なかなか反応が得られないのが現実です。

では、実際にSNSを効果的に活用し、集客や売上につなげている飲食店は、どのような工夫をしているのでしょうか。

成功しているお店とそうでないお店の違いはどこにあるのでしょうか。

飲食店へのインタビュー調査

小規模な飲食店がどのようにSNSで売上を伸ばしているのかを調べたしたテルブカ大学の研究チームによる調査があります。

調査対象となった飲食店は、いずれも従業員が1人から19人の規模で、SNSを使ったマーケティングをすでに1年以上実施していました。

多くの店舗でオーナーが戦略の中心を担っている点が共通していました。

研究者たちは、Zoomや電話を使ってインタビューを行いました。

インタビューは半構造化形式で行われ、事前に用意した質問を軸にしながらも、自由な回答が引き出せるように工夫されていました。

また、聞き取りだけでなく、実際のSNS投稿やフォロワー数といったデータも確認し、内容を裏付けています。

飲食店のSNSマーケティングを成功させる5つの要因

この調査から、小規模な飲食店がSNSを活用し、売上や知名度を高めていくためには、いくつかの重要な要因があることが明らかになりました。

これらはインタビュー内容や実際の運用状況をもとに、以下の5つの要素にまとめることができます。

1.対話性

まず「対話性」についてです。

これは、フォロワーやお客様との日々のやり取りを大切にする姿勢を指します。

たとえば、投稿に寄せられたコメントに丁寧に返信したり、InstagramのDMで問い合わせに対応したり、ライブ配信を通じてリアルタイムでコミュニケーションを取るなどの行動が含まれます。

このような積極的な対話が、顧客との信頼関係を築く土台となり、継続的な支持へとつながるのです。

2.トレンド感

次に「トレンド感」です。これは、いま何が流行しているのかを素早くキャッチし、それを自分のお店のSNS投稿に取り入れる力です。

実際に成功している飲食店の多くは、人気の音楽をBGMに使った動画を作ったり、話題のハッシュタグや企画を取り入れたりすることで、より多くのユーザーの目に留まるよう工夫していました。

こうしたトレンドの活用は、「おすすめされやすさ」を決めるアルゴリズムにも好影響を与え、拡散力を高める要素にもなっているようです。

3.継続性

3つ目は「継続性」です。

SNSは一度投稿して終わりではなく、定期的に情報を発信し続けることが大切です。

調査対象となった飲食店の中には、毎日決まった時間に投稿を行っている店舗もありました。

投稿を通じて、ユーザーに「このお店はいつも頑張っているな」「また見たいな」と感じさせることが、自然な形でのファン獲得やリピーターの増加につながっていました。

4.好奇心

4つ目の要素は「好奇心」です。

これは、自分のビジネスだけに集中するのではなく、他店のやり方や市場の動きに積極的に目を向ける姿勢を意味します。

たとえば、競合店が使っている編集アプリや投稿スタイル、ユーザーとの関わり方を観察し、「自分の店でもやってみよう」と工夫しているオーナーが多く見られました。

こうした情報収集と実践が、投稿の質や効果を高めることに寄与します。

5.起業家マインド

そして最後に、「起業家マインド」と呼ばれる考え方が大きな鍵となっていました。

これは、常に前向きにチャレンジしようとする姿勢、わからないことを自ら学ぶ力、そして困難な状況でもあきらめずに行動し続ける精神のことです。

たとえば、動画編集のスキルがなかったにもかかわらず、独学で「CapCut」などの編集アプリを使いこなすようになった事例もありました。

また、売上が伸び悩んだときにこそ、新しいSNS企画を試してみるという柔軟さも、成功につながっていたようです。

このようなマインドセットが、SNSという変化の速い世界で成果を出すための土台になります。

SNSマーケティングでは「まずはやってみる」ことが大事

この調査を通してはっきりしたのは、SNSで成果を出すために必要なのは、特別な技術や大がかりな仕組みではなく、日々の小さな工夫と前向きな姿勢だということです。

成功している飲食店の多くは、毎日の投稿を地道に続ける中で、少しずつ自分たちのスタイルを築いています。

その際に、写真や動画などのビジュアル要素をうまく組み合わせているお店ほど、ユーザーの記憶に残りやすく、反応も高くなる傾向が見られました。

とくに動画の活用は効果的です。静止画に比べて、動きや音が加わることで、見る人の注意を引きやすくなります。

商品を作っている様子や店内の雰囲気、スタッフの笑顔などを動画で伝えることで、より親しみを感じてもらえるようになります。

動画は難しそうに見えるかもしれませんが、最近ではスマートフォンだけでも簡単に撮影・編集できるアプリが多くあり、初心者でもすぐに始められます。

また、SNSの種類によって反応の違いがあることにも注意しておきましょう。

たとえば、Instagramでは写真の美しさや統一感が重視されますが、TikTokでは素早いテンポやユーモアが好まれる傾向があります。

そのため、ひとつのSNSだけに絞るのではなく、複数のプラットフォームを試しながら、自分たちのスタイルに合うものを見つけていくことが大切です。

Instagramだけを使っていたお店が、TikTokも活用することで、新しい客層にリーチできることもあります。自分のお店にどのSNSが向いているのかを探る姿勢が大切です。

SNSの世界は変化が非常に早いため、「正解」を待っていてはタイミングを逃してしまいます。

最初から完璧を目指すよりも、「まずはやってみる」ことが何より重要です。

参考文献:Adisthy Shabrina Nurqamarani, Agus Priyanto, Sarah Fadilla. (2024). Identifying Critical Success Factors For Social Media Marketing Adoption in Micro and Small Culinary Businesses.