途中離脱を防ぐ!コンテンツの読了率を高める言葉の選び方

コンテンツマーケティングにおいて、記事を「クリックしてもらう」こと以上に重要なのが、「最後まで読んでもらう」ことです。

読了されなければ、どんなに素晴らしい内容を書いても、商品の魅力やブランドの価値は伝わりません。

では、どうすれば読者の注意を引きつけ続け、読了率を高められるのでしょうか?

この問いに、膨大なデータを用いて科学的にアプローチしたのが、ペンシルバニア大学のジョナ・バーガー教授らの研究です。

どんな言葉が読了率を高めるのか

この研究では、「どんな言葉が読者の注意を持続させるのか?」を調べるために、自然言語処理(NLP)技術を使い、約35,000本のWeb記事と、合計60万回以上にわたる閲覧履歴を解析しました。

分析の対象となったWeb記事は、実際のニュースメディアから取得されたもので、スポーツ、ビジネス、ライフスタイルなど、さまざまなジャンルをカバーしています。

読者がページを開いてからどこまで読んだのか(スクロールの深さ)や、どの段落まで読み進めたのかを細かく記録し、どんな文章が最後まで読まれるのかを検証しました。

文章に対する主な評価項目は以下の2点です。

  • 処理のしやすさ:分かりやすい文章か?馴染みのある言葉や具体的な表現が使われているか?
  • 言葉の感情度:「怒り」「不安」「悲しみ」などの感情を含む言葉がどのくらい含まれているか?

分析の結果、いくつかの重要な発見がありました。

疲れない文章が最後まで読まれる

まず、「読みやすさ」が大きな効果を持っていることが分かりました。

難しい言葉が使われた長い文章よりも、具体的な言葉が多く使われている短い文章の方が、最後まで読まれる可能性が高かったのです。

たとえば、「高齢者の購買行動」よりも、「お年寄りがスーパーで何を買ったか」の方が、読者の注意を引きつけるのです。

これは文章を理解するのに余計なエネルギーを使わなくて済むことが要因です。

短くて親しみのある文はスムーズに頭に入ってくるため、読者は疲れません。そのため、途中離脱せずに最後まで読んでもらえるということです。

言葉の感情度の影響

感情を含む言葉については、読了率を高めるものもあれば、低下させるものもありました。

まず、不安や希望、ワクワクする感情を喚起する言葉は、読了率を高める効果がありました。

こうした感情は、読者に「この先どうなるのだろう?」という不確実性や、「もっと知りたい!」という覚醒状態をもたらし、読み続けたいという気持ちを高めてくれるからです。

逆に、「悲しみ」の感情を喚起する言葉は、読了率を下げる傾向にありました。

落ち込んだり重い気分にさせる表現は、「その場から離れたい」という気持ちにさせてしまうため、読者の関心を持続させるには不向きなのです。

ポジティブな感情もネガティブな感情も効果的

言葉の感情度に関しては、実験でもその効果が分かっています。

同じような内容の記事でも「不安を感じさせる言葉」が含まれているだけで、読み続けたいと答える人の割合が増えるという結果が出ているのです。

また、「希望」や「興奮」などポジティブな感情を含む言葉でも同様の効果がありました。

つまり、悲しい気持ちを呼び起こす言葉以外は、ポジティブでもネガティブでも、感情を動かせば読者の注意を引くことができるということです。

コンテンツ作成の際のポイント

以上の結果を踏まえると、マーケティングのためのコンテンツを作成する際に、重要となるポイントが明確になります。

1.読みやすさを徹底的に高める

読者の注意を引き止めるには、文章が「処理しやすい」ことが非常に重要です。そのためには次のようなスタイルで書きましょう。

  • 短い文と短い単語を使う
  • 難しい漢字や専門用語は避ける
  • 抽象語ではなく、具体的な表現を選ぶ
    (例:「高性能な製品」ではなく「1日10時間使えるバッテリー内蔵スマホ」など)

つまり、「誰でもすぐに意味がわかる」「頭にイメージが浮かぶ」表現にすることが大切です。

2.読者の感情を動かす言葉を使う

「感情を呼び起こす言葉」が読者の関心をつなぎとめる力を持つことが明らかになっています。ただし、どんな感情でもよいわけではありません。

読了率を高めてくれる、以下の感情を喚起させましょう。

  • 不安(例:「あなたは大丈夫ですか?」)
  • 希望(例:「きっと変えられます」)
  • 興奮や期待(例:「今すぐ試したくなる!」)

これらの感情は、「この先どうなるのか知りたい」「もっと詳しく知りたい」という不確実性と高揚感を生み出します。それが読者を引き込み、読み続けたい気持ちを高めるのです。

一方で、「悲しさ」や「落ち込み」を誘う表現は逆効果となる場合があるため、避けましょう。

3.「次を読みたくなる構成」にする

段落や見出しごとに「続きを読ませる工夫」を入れることも効果的です。たとえば、以下のような構成を意識してみてください。

  • 問いかけで始める:「なぜ顧客はあなたの商品をスルーするのでしょうか?」
  • 展開を小出しにする:「実は、読まれない理由には“ある共通点”があります。」
  • 予告する:「この記事の後半では、その具体的な対策もご紹介します。」

このように、「読者の先を読みたい欲求」や「期待感」を刺激することで、自然とページの最後まで引っ張ることができます。

これからのコンテンツづくりに求められること

コンテンツの「内容」だけでなく「言葉の使い方」も読者(消費者)の行動に大きな影響を与えることが、お分かりいただけたと思います。

ただし、注意を引きつけられるからといって、煽りや誇張に頼りすぎるのは危険です。

それによって、読者との信頼関係を損なってしまえば、コンテンツが読まれたところで、購入や申込にはつながりません。

また、研究では文章そのものの特徴に焦点が当てられていましたが、「どこで読まれているか」も重要な要素です。

スマホで流し読みされる記事と、自宅でじっくり読まれる記事とでは、最適な言葉遣いが変わるかもしれません。時間帯や読者の感情状態によっても、響く表現は異なってきます。

正しい情報を発信するだけでなく、読者の「今の気持ち」や「読み方の環境」にも寄り添った言葉選びが、コンテンツづくりに求められます。

参考文献:Jonah Berger, Wendy W. Moe, and David A. Schweidel. (2023). What Holds Attention? Linguistic Drivers of Engagement.