ソートリーダーシップとは?B2Bマーケティングにおける活用方法

近年、B2Bマーケティングの現場で注目を集めているキーワードの一つに「ソートリーダーシップ」があります。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、実は多くの企業がすでにこの考え方を取り入れ、自社のブランド力向上や営業活動に役立てています。

では、ソートリーダーシップとは一体何を指すのでしょうか。

その意味と、具体的なマーケティング施策について説明します。

ソートリーダーシップとは

ソートリーダーシップ(ThoughtLeadership)とは、専門性の高い情報や独自の視点を発信し、その業界や専門分野で「信頼される情報源」になることを意味します。

もっと分かりやすくに言えば、「この人の意見は信頼できる」「この会社の情報は参考になる」と思ってもらえる存在になることです。

例えば、あなたがマーケターだとして、「このトレンドについて誰の意見をまず見たいか?」と考えたときに真っ先に思い浮かぶ人や企業がいたら、その人たちはあなたにとって「ソートリーダー(=思考の先導者)」です。

ソートリーダーシップとは

B2Bマーケティングにおいても、企業やそこで働く従業員が、ソートリーダーシップを発揮することが求められます。

なぜならB2Bの購買プロセスが「信頼」を非常に重視するからです。

B2Cと比べて、B2Bの商材は高額であり、導入期間や影響範囲も大きいため、買い手は慎重に情報を集め、比較検討を重ねます。

その際、製品スペックや価格だけでなく、「この企業は信頼できるのか」「この担当者は業界のことを理解しているか」といった判断が、意思決定に大きな影響を与えます。

こうした中で、企業や個人が業界の課題やトレンドについて、自らの視点でわかりやすく発信し続けることで、信頼を得ることができます。

これがソートリーダーシップの力です。

信頼される存在になることで、商談の前段階からすでに好意的な印象を持たれ、交渉がスムーズに進みやすくなります。

さらに、ソートリーダーシップによって得られる信頼は、価格競争に巻き込まれにくくする効果もあります。

顧客が「知識や見解に価値を感じている」場合、その企業や担当者に対する期待は、単なるコストの比較では測れなくなるからです。

つまり、ソートリーダーシップは、差別化・ブランディング・顧客との関係性構築という複数の観点から、B2Bマーケティングにおいて極めて重要な戦略といえます。

ソートリーダーシップの構成要素を応用したマーケティング施策

具体的に、企業やフリーランスがソートリーダーシップを発揮するにはどうすれば良いのでしょうか?

ノバ・サウスイースタン大学のジム・バリー教授らが、影響力のあるマーケティングの専門家たちのLinkedIn(ビジネス用SNS)を分析したところ、ソートリーダーと呼ばれる人たちには共通する特徴があることがわかりました。

それは、「信頼される存在として認識されていること」と「実力のある発信者として認識されていること」です。

この2つがソートリーダーシップの構成要素といえます。

これらを得て、ソートリーダーとしての地位を固めるためには、次のようなマーケティング施策が有効となります。

1.有益で新しい情報を発信する

買い手が「知らなかった」「なるほど」と感じるような、業界の最新トレンド、将来の動向、課題への具体的な対応策などを発信しましょう。

新しいテクノロジーの活用事例や規制の変化への対応策などをタイムリーに伝えると効果的です。

特に「他では読めない視点」や「現場での実践知」があると、「この会社は業界の未来を読んでいる」と高く評価されやすくなります。

2.教育的なコンテンツをつくる

ブログやホワイトペーパー、解説動画、ウェビナーなどを使って、業界の基本知識から応用的なノウハウまで、丁寧にわかりやすく説明しましょう。

難しい専門用語を避け、実際の課題解決につながるような「ベストプラクティス」や「ステップバイステップの方法」を伝えることで、読者や視聴者から「勉強になる」「信頼できる」という印象を持ってもらえます。

3.ソーシャルメディアでの対話を大事にする

一方向的に情報を発信するだけでなく、コメントに返信したり、質問に答えたり、他のユーザーの投稿にもリアクションをするなど、SNS上での対話を意識しましょう。

特にB2Bでは、相手との信頼関係がビジネスにつながるため、「この人はちゃんと見てくれている」と感じさせる対応が非常に重要です。

結果として、フォロワーのロイヤルティやコンテンツの拡散力も高まります。

4.専門性を伝える実績やエビデンスを示す

自社の信頼性や実力を伝えるためには、数字や実績、第三者の評価を活用するのが効果的です。

たとえば、「導入後3か月で売上が20%向上」などの成果データ、信頼できる機関による調査結果、実際の顧客の成功事例や証言(レビュー、インタビュー)などを用いると、客観性が加わり、発信内容の説得力が増します。

5.継続的な発信を心がける

どれだけ良い情報でも、発信が一回きりでは印象に残りません。

週1回のブログ投稿、月1回のニュースレター、定期的なSNS更新など、計画的に情報を発信し続けましょう。

時間をかけて関係性を築くことで、読者や見込み客の間に「この会社は一貫して価値ある情報を提供している」「信頼できるパートナーだ」という認識が定着していきます。

ソートリーダーシップはあらゆる面で競争優位を生む戦略

ソートリーダーシップは、情報発信によって信頼と影響力を高めていく考え方ですが、その効果はオンライン上の認知だけにとどまりません。

実は、こうした発信活動を通じて得られる信頼は、人材採用やパートナーシップの形成にも好影響を与えることがわかってきています。

たとえば、候補者が企業の社員による専門的な発信を見て、「入社したら自分も同じような専門知識を得られる」と感じれば、応募の動機につながることもあります。

また、共通の視点を持つ他社から声がかかり、新たな協業の機会が生まれるケースもあります。

このように、ソートリーダーシップは見込み顧客との関係構築だけでなく、企業の信頼資産を広げる大きな力になります。

ソートリーダーシップの構成要素である「信頼」と「実力」が揃っている、アカウントの情報ほど、拡散されやすいことも研究で判明しています。

ソートリーダーシップは、競争優位を生む戦略の一つといえます。

今からでも遅くありません。小さな発信から始めて、信頼を積み重ねていきましょう。

参考文献:James M. Barry, John T. Gironda. (2019). Operationalizing thought leadership for online B2B marketing.