ティザー広告の効果を高める設計。最初に好奇心を高めて猜疑心を低下させる

広告を作るとき、「どうやって消費者の注意を引くか」というのは悩みどころです。

商品やサービスの魅力をどれだけ丁寧に伝えても、そもそも見てもらえなければ意味がありません。

そんな中、あえて情報をすべて見せず、興味だけを引き出す「ティザー広告(ティーザー広告)」という手法が、改めて注目を集めています。

ティザー広告はよく使われている手法ではありますが、その効果の仕組みを深く理解している人は少ないかもしれません。

ただ「焦らす」だけでは、期待外れやストレスにつながるリスクもあります。

では、どのように設計すれば、消費者の心を自然に動かし、広告効果を高めることができるのでしょうか?

最初に好奇心を持たせることができれば効果は高い

そもそも、ティザー広告は効果があるのか?ということなのですが…

最初の段階で、好奇心を持たせることができれば、購買意欲やブランドに対する好感度は高まるといえます。

ティザー広告の効果を調べたホーエンハイム大学の研究チームによる実験があります。

この実験では、化粧品ブランドのニュースレターの読者に、ティザー広告として、複数の化粧品が詰め込まれたギフトボックスの画像が提示されました。

この画像は、具体的な中身が分からないように加工されていました。

その後、フォローアップ広告として、ギフトボックスの中に入っている製品の詳細(商品名や内容成分など)が明確に示される広告が表示されました。

これら一連の広告を見せた後で、商品の評価や、購買意欲などを聞き取りました。

その結果、最初のティザー広告で、好奇心を抱いた人ほど、商品を高く評価し、購買意欲も高まることが分かりました。

なぜ好奇心がティザー広告の効果に影響するのか?

なぜ好奇心がティザー広告の効果に影響を与えるのでしょうか?

それは好奇心、つまり「答えを知りたいという気持ち」が解消される過程にポジティブな感情が伴い、それが広告に対する疑いを消すことにつながるからです。

基本的に消費者は広告を見たとき「これは本当に信頼できるのか?」という懐疑心を抱きます。

広告が発するメッセージは、説得を目的とした情報であるため、受け手側は警戒しながら受け取るのです。

ところが、ティザー広告のように、あえて情報を一部だけ見せる手法を用いると、消費者の中に「この続きが知りたい」「何が隠されているのだろう」という知的な欲求、すなわち好奇心が生まれます。

これは別の見方をすると、「自分の知識」と「未知の情報」の間にギャップがある状態です。この状態になった人間は「ギャップを埋めたい」という動機づけが自然に働きます。

そして、そのギャップが解消されたとき、安堵や喜びといったポジティブな感情を体験します。これは「好奇心の満足」という心理的報酬にあたります。

このポジティブな感情が、広告に対する防御的な態度をやわらげる役割を果たします。

つまり、広告の中で好奇心を感じ、それが満たされた消費者は、気分が良くなっているために、広告メッセージに対して批判的になり難くなるということです。

その結果として、商品の評価が高まり、購買意欲も向上するのです。

実際に今回の実験でも、最初のティザー広告で、好奇心が高まった消費者ほど、広告に対する疑いの気持ちが低下することが判明しています。

そしてそれによって、商品に対する評価も高くなっていました。

ティザー広告を設計するための効果的な方法

消費者の好奇心を高めるティザー広告を設計するには、いくつかの心理的ポイントを意識することが重要です。

1.情報の一部だけ提示

好奇心を高めるティザー広告をつくるうえで、まず重要になるのは「すべてを見せない」ということです。

商品やサービスの特徴を最初からすべて伝えてしまうと、消費者はそれ以上知ろうと思ってくれません。

そこで意図的に情報の一部を隠すことで、心理的な「情報ギャップ」を生み、「もっと知りたい」「続きが気になる」という感情を引き出す必要があります。

たとえば、製品画像を少しぼかしてラベルやロゴを読みにくくする方法や、商品のシルエットだけを表示して中身を想像させるようなビジュアル表現があります。

また、キャッチコピーで「詳細は後日発表」「Comingsoon」といった予告を添えることで、情報がまだ完全には明かされていないというメッセージを明確に伝えることも有効です。

これらの工夫によって、消費者の注意を引くだけでなく、次のアクションへの関心を高める効果が期待できます。

2.消費者が自分で考えたくなるように設計する

広告を見た人が「自分で答えを考えたくなるような構成」にすることも重要です。

脳は、何かを推測したり予測したりするときに、その対象に深く注目する傾向があります。

そのため、広告の中で問いかけの要素を取り入れると、受け手の内的な関心が強まります。

たとえば、「〇〇といえば…?」「このヒントから連想できるものは何でしょう?」といった問いを添えると、消費者は自然と答えを考え始め、その広告に意識を集中させるのです。

こうした能動的な参加のきっかけを作ることで、主体的に情報と向き合う心理状態を生み出すことができます。

3.最後に気持ちよく解決させる

好奇心を刺激しただけで終わらせるのではなく、最後に必ず「解決される気持ち良い体験」を提供しなければなりません。

好奇心は「解消されたとき」にこそ、強いポジティブな感情が生まれるのです。

この感情が広告への警戒心を下げ、商品を受け入れやすい心理状態へとつながります。

したがって、ティザー広告で興味を持たせたあとは、その続編として詳細な製品情報をしっかりと提供することが欠かせません。

たとえば、続きの動画やランディングページで、これまで隠されていた商品名、ビジュアル、特徴などを丁寧に明かし、消費者が「なるほど、そうだったのか」と納得できる構成をつくることが求められます。

場合によっては、想像を上回るサプライズや特典などを用意することで、より強い感情的報酬を感じさせることも可能です。

【番外】ティザー広告を作れる要素がないでもOK

「ウチの商品はティザー広告を作れる要素がない」というケースでも大丈夫です。

実は好奇心を喚起する要素があれば、その内容が商品と直接関係していなくても効果を持つことが実験でも分かっています。

商品の内容とは無関係なパズルやクイズといった要素が、消費者の気分を高め、その後に見た広告の評価にポジティブな影響を与えるのです。

つまり、広告の前後に配置されるコンテンツや導線によっても、評価が変わるということです。

たとえば、SNSの投稿であれば冒頭に簡単なクイズや一言なぞかけのような要素を入れたり、動画広告であれば冒頭に少し考えたくなる問いかけを投げかけたりすることで、視聴者の好奇心を喚起できます。

また、メールの件名やWebバナーにおいても、あえて情報をぼかして「何だろう?」と思わせる表現を使うことで、クリック率や関心度を高めることができます。

消費者の感情の動きに合わせた設計が重要

ティザー広告の効果は「話題性」や「視認性」の高さだけでなく、好奇心とそれに続く感情の変化が連動することで初めて成り立ちます。

消費者は、好奇心が適切なタイミングで解消されたとき、心理的に満たされ、その心地よさが評価や購買意欲の向上につながるのです。

ティザー広告の設計において、注意すべきことは、ファーストビューの段階で消費者の、判断の流れが動き出しているということです。

つまり、最初に見た瞬間に「なんだろう?」「知りたい」と思わせることができなければ、ティザー広告に特有のポジティブな効果が得にくくなります。

ですから、広告全体のストーリー構成や情報提示の順序だけでなく、冒頭でどう関心を引き、どのように感情を動かすかまでを一貫して考える必要があります。

ティザー広告の設計で重要なことは、インパクトのあるコピーや目を引くビジュアルを作ることではありません。

消費者の心がどう動くかを理解し、その動きに合わせた広告体験を設計することです。

参考文献:Verena Huttl-Maack, Tara M. Sedghi, Jana M. Daume. (2023). Through rose-tinted glasses: How inducing and resolving curiosity makes consumers less skeptical and improves their product evaluations.