【実験】ゲーム内の途中広告はウザいだけか?売上を高める効果はあるのか?

ゲームの途中で画面に広告が表示されることがあります。

プレイしている側からすると、かなりウザいですから、そのブランドや企業に悪い印象を持たれてしまう可能性があります。

しかし、ゲームという圧倒的に集中している状態で、視界に入るものはそれだけ記憶されやすいともいえます。であれば、最終的には売上の増加が期待できるかもしれません。

果たしてゲーム内の広告の効果はプラスなのでしょうか?それともマイナスなのでしょうか?

ゲーム内で表示された広告の商品は選ばれやすい

ゲーム内の広告が、ブランド選好に与える影響を調べたハインリッヒ・ハイネ大学の研究チームによる実験があります。

参加者にテトリスをプレイさせ、その途中でチョコレートメーカーの広告が表示されるようにしたのです。

その後で、広告に表示されなかった他のチョコレートメーカーの商品と一緒に提示し、どちらの商品が欲しいかを選ばせました。

その結果、ゲームの途中で広告が表示されたメーカーの商品のほうが、選ばれやすいことが分かりました。

しかも、広告をウザいと感じるかどうかも確認していますが、ウザいと感じていても、同様に選ばれやすかったのです。

これは参加者が「ゲーム内に出てきたメーカーのものだ」と明確に認識している場合でも、同様でした。

好感度アップのカギは「脳の錯覚」

なぜゲーム内のウザい広告でさえプラスの効果を発揮したのでしょうか?

それを説明するキーワードが、「脳の処理の容易さ」です。

人間の脳というのは基本的に楽をしたがります。そのため、容易に処理できるものを好みます。

視覚情報の処理においても、一度見たことのあるものは容易に処理できるため、好意的に感じやすいというメカニズムがあります。

「何度も会っていると好きになる」という恋愛のアドバイスを聞いたことのある人もいるかもしれませんが、このような単純接触効果も、脳が楽だと感じるから起こることです。

つまり、一度でも見たことのあるブランドロゴは、それだけで「なんとなく好き」と感じてしまうのです。

この「なんとなく」の感情は、理屈ではなく感覚のレベルで起きるため、「あの広告、めっちゃウザかったな」と認識していても、それとは無関係にブランドへの好意が高まってしまうのです。

実験では、「ゲーム内で広告されたブランドの商品です」と明示しても、選ばれる傾向は変わりませんでしたが、これは「知ってる」こと自体が好印象に繋がっているためと考えられます。

ゲーム内広告は購買意欲を低下させる

以上の結果を見て、これからはゲーム内でどんどん広告を表示していこう、と思うのは早計です。

実は逆効果になるという実験結果もあります。こちらはカーネギーメロン大学のアレッサンドロ・アクィスティ教授らによって行われたものです。

この実験では新作ゲームをテストしてもらうといって参加者を集めました。ゲームの内容はテトリスと似たようなものです。

参加者が座る机には事前に「Colar」というブランドのマグカップが置かれていました。

そして、ゲームの途中で、その「Colar」の広告もしくは、別のブランドの広告が表示されました。

その後で、マグカップに、いくらまでなら支払う意思があるかを確認しました。

その結果、「Colar」の広告が表示された参加者は、優位に低い金額を示すことが分かりました。

心理的リアクアタンスの発生

ゲーム内の広告が支払い意欲を低下させたのは「心理的リアクタンス(反発反応)」が発生したからです。

これは、人間が強制的に自由を侵害されたと感じたとき、それを取り戻すために芽生える反抗的な心理です。

ゲーム内で広告が表示されるのも、認知的流れが強制的に中断される現象ですから、心理的リアクタンスが発生します。

そして、それによって生じた反抗的な感情が、広告のブランドにも投影されるのです。

特に広告が無関係な内容であった場合、そのネガティブな効果はさらに強まります。

人は情報の一貫性や文脈的整合性を重視するからです。

状況と関係のない情報が強制的に挿入されると、苛立ちを感じやすくなるのです。

自社のターゲットに合った出稿パターンを見つける

このように、ゲーム内の広告の効果は研究によって、異なっています。

そしてこれは、「好感度を高めるならOKだが、買わせたいならNG」という単純な話でもありません。

今回の研究はどちらも、ゲームに対する熱中度合いまでは確認していません。

なので、熱狂的なゲーマーか、暇つぶしのユーザーかによっても、効果が変わる可能性はあります。

また、ゲームの内容によっても、感じ方は変わるでしょう。

つまることろ、アナリティクスデータなどからコンバージョンを分析しながら、自社とターゲット層に合った出稿パターンを、検証することが大切ということです。

<参考文献>
・Raoul Bell & Axel Buchner. (2018). Positive Effects of Disruptive Advertising on Consumer Preferences.
・Alessandro Acquisti & Sarah Spiekermann. (2011). Do Interruptions Pay Off? Effects of Interruptive Ads on Consumers’ Willingness to Pay.