顧客満足度調査のアンケート項目で売上が変わる!追加すべき質問内容はコレ

「お客様の声」に耳を傾けるのは大切なことです。

多くの企業がアンケートなどを使って、顧客満足度を計測し、それをサービスに活かしています。

しかし、こうしたアンケート調査を、満足度の向上のためだけに活用するのはもったいないといえます。

実は、質問項目を少し工夫するだけで、売上を増加させることが可能なのです。

どうすれば良いかというと「何が良かったですか?」という質問を追加するだけです。

顧客満足度調査のアンケート項目を変えると売上も変わる

ユタ州立大学のスターリング・ボーン教授らが、全国チェーンの写真スタジオの顧客2万人以上を対象に、顧客満足度に関するアンケート調査を行いました。

このとき、顧客によって、ランダムに以下のどちらかの質問形式に割り当てられました。

  • オープンな質問(例:今回の体験でどんなことが良かったですか?)
  • クローズな質問(例:サービス品質を良いから悪いの5段階で選択してください)

アンケートが実施されてから、その後の1年間の購買データを追跡しました。

その結果、オープンな質問をされた顧客は、購買金額が8.25%高く、来店・購入回数も8.79%多いという結果になりました。

BtoBでも同様の効果

上記はBtoCでの顧客満足度調査によるものですが、BtoBにおいても同様の効果が出ることが調査で判明しています。

こちらの調査では、ソフトウェアの無料トライアルを終了した顧客に、同様のアンケートを行いました。

その結果、「このソフトのトライアルで特によかった点を教えてください」と、オープンな質問をされた顧客は、購入金額が高くなることが、分かりました。

なぜオープンな質問項目が売上増をもたらすのか?

このように、オープンな質問をすると、顧客の購入額が増える理由は、記憶の再構成と感情の誘導にあります。

人間は、自分の体験を思い出すとき、そのまま事実を思い出しているのではなく、ある程度「つくり直す」ような形で記憶を再構成しています。

特に、何かを聞かれたときは、その質問内容が記憶の呼び出され方に影響を与えます。

たとえば、「何が良かったですか?」と聞かれると、脳は「良いところを探そう」と働きます。そして、体験の中からポジティブな部分に注目し、それを思い出すことで、体験全体が「良かったこと」として再編集されやすくなるのです。

さらに、それを自分の言葉で表現する(自由記述する)ことにより、その記憶はより強く固定され、後になっても思い出しやすくなります。これを心理学では「記憶の定着」や「記憶の可視化」と呼びます。

つまり、ただ思い出すだけでなく、それを言葉にすることで、自分自身の体験を「ポジティブなもの」として記録し直すことになります。

その結果として、その企業やサービスに対する印象が良くなり、将来の購買判断にも影響を及ぼします。

実際、今回の調査でも「自由記述でポジティブな意見を引き出す」ことで、ただアンケートに答えるだけよりも、売上増加が見られました。

これは、単に満足度が高いから買ったのではなく、「ポジティブな視点で過去の体験を振り返らされたから」こそ、次回もその企業を選ぼうという気持ちが高まったと考えられます。

また、ポジティブな自己表現を行ったあとは、その言動に整合するような行動(つまり再購入)をとる傾向があることも知られています。

これは「一貫性の原理」と呼ばれます。この原理が働くおかげで、自分が良いと言ったものを、再び選びたくなるという心理になるのです。

不満を持つ顧客からの売上さえ増やすことが可能

顧客満足度の調査は、企業にとって「評価を受ける場」であると同時に、「行動を変えてもらうチャンス」でもあります。

今回の調査が示すように、ただ情報を集めるのではなく、質問の設計ひとつで売上にまで影響を与えることができるのです。

研究では、サービスに不満を持った顧客でさえ、「良かった点は?」という自由記述の質問を受けると、その後の購買金額が増えることも確認されています。

サービスの質を「悪い」と評価した顧客でも、ポジティブな質問に答えた場合、翌年の支出が「答えなかった人」の2倍近くに増えていました。

これは、ネガティブな感情が残っていても、質問の仕方次第でその印象をやわらげ、リピートの可能性を高められることを意味します。

これはマーケティング戦略において、非常に示唆的です。

なぜなら、すべての顧客が100%満足しているわけではなく、不満を抱えた顧客の中にも将来的なロイヤルカスタマーになり得る人が含まれていることを意味するからです。そして、その可能性を引き出すかどうかは、アンケートの「設計力」にかかっているといえます。

また、今回の研究が示唆しているのは、記憶というのは固定された過去ではなく、何度も書き換えられる「感情の履歴」であるということです。顧客満足度調査においてポジティブな問いかけをして、顧客の感情の記録に介入できるなら、それは極めて強力なマーケティング手法になります。

顧客アンケートの設計は「満足度を測るもの」から「満足度をつくるもの」へと進化しているのです。

この視点を持ちながら、アンケートという日常的な顧客接点を、戦略的に見直していく必要があります。

参考文献:Sterling A. Bone, Katherine N. Lemon, et al. (2016). Mere Measurement “Plus”: How Solicitation of Open-Ended Positive Feedback Influences
Customer Purchase Behavior.