【ABテスト】縦型動画と横型動画のスマホ広告はどちらが効果的なのか?

スマートフォンが生活の中心となり、私たちは毎日のように動画広告を目にしています。

最近よく見るようになったのが、画面いっぱいに表示される縦型動画広告です。

TikTokやInstagram Reels、YouTube Shortsなど、縦型フォーマットを前提としたプラットフォームの普及により、縦型動画は一時的な流行ではなく、ひとつのスタンダードとして定着しつつあります。

とはいえ、「縦型と横型、どちらが効果的なのか?」という疑問は、いまだ多くのマーケターの頭を悩ませています。

どちらを選ぶかによって、広告の成果は大きく変わるかもしれません。

この記事では、最新の研究結果(ABテストなど)をもとに、縦型と横型の広告フォーマットがユーザーに与える影響を解説していきます。

【ABテスト】縦型動画広告と横型動画広告の効果を比較

スマートフォンにおける、縦型動画広告と横型動画広告の効果を比較するためのABテストが、ゲント大学の研究チームによって行われました。

研究チームは、15秒の縦型と横型の広告を作成し、それをFacebookの「A/Bスプリットテスト」という機能を使い、ランダムに表示させました。

広告の内容はまったく同じで、フォーマット(縦型か横型)だけが異なっています。

その結果、縦型広告は横型広告よりも、最後まで再生された回数が多く、3秒以上の再生数や動画の途中視聴率(25%、50%、75%、100%)もすべて上回っていました。

さらに、いいね、シェア、コメントなどのエンゲージメントも縦型の方が高いことがわかりました。

縦型動画広告のほうがエンゲージメントが高い理由

このような結果になった理由は、縦型動画がスマートフォンの日常的な使用習慣に合っているからです。

スマホユーザーの多くは、普段から端末を縦向きに持つことに慣れています。そのため、縦型動画であれば端末を持ち替える必要がなく、スムーズに視聴を始めることができます。

これに対し、横型動画をフルスクリーンで見るには、横向きにする必要が生じ手間が掛かります。縦向きのまま見ようとすると、表示が小さすぎて見えにくいこともあります。

また、縦型動画は画面全体を占めるため、より没入感があり、他の通知やコンテンツに気を取られにくいという特徴があります。

視聴者の注意が画面内に集中しやすくなるため、最後まで見てもらえる可能性が高まります。このような視聴体験のスムーズさが、途中離脱の減少や再生完了率の向上につながっていると考えられます。

さらに、縦型はスマホでの撮影や投稿といった日常的な行動とも一致しており、とくにSNSでは縦型動画が主流となっています。

こうしたプラットフォームとの親和性が、ユーザーの心理的な抵抗を減らし、コンテンツへの関心や行動(いいね・シェア・コメント)を高めているといえます。

CPCやCPRには差が出なかった理由

しかし、今回の実験結果では注意すべきポイントがあります。

それは、リンクのクリック数に関しては、縦型と横型で大きな差は見られなかったことです。

また、クリック単価(CPC)や、成果あたりのコスト(CPR)といった広告の効率性を表す指標でも、両者に実質的な差は確認されませんでした。

つまり、縦型広告の方が見てもらいやすいものの、そこからのコンバージョンに関しては、差が出なかったということです。

なぜ、差が出なかったのか明確な理由は分かりませんが、広告内容やユーザーの行動の特性が関係していた可能性があります。

今回の広告は、大学の研究への参加を呼びかけるもので、視聴者にとってはやや関心が湧きにくいテーマだったかもしれません。

動画に興味を持ったとしても、実際にリンクをクリックして申込まで進む人は限られていた可能性があります。

また、縦型の動画は画面全体に表示されて没入感が高い反面、視聴体験だけで満足してしまい、リンク先に進もうとしないケースも考えられます。

さらに、Facebookの広告はユーザーの興味に合わせて配信されるため、縦型と横型で表示されたユーザー層に違いがあった可能性もあります。

こうした要素が重なり、視聴やエンゲージメントには差が出た一方で、クリック数や広告コストには明確な差が現れなかったと考えられます。

Z世代には縦型動画が刺さる

だからといって、動画広告を出稿する際に、「縦型でも横型でもどっちでもいいや」と考えてしまうのはもったいないです。

別の実験では、18歳から65歳までの幅広い年齢層を対象に、年齢による効果の違いが調べらています。

こちらの実験では、性別や動画の内容の好みに左右されないよう、中立的な社会問題(性別ステレオタイプ)に関するアニメーション動画が使われました。

視聴後のアンケートでは、若年層、特にZ世代(おおむね23歳以下)の参加者は、縦型動画の方が見やすく、内容も理解しやすいと感じていました。

一方、30歳前後以上の参加者は、縦型動画をやや見づらく感じ、内容も理解しづらい傾向が見られました。

これは、Z世代が縦型動画に慣れているのに対し、それよりも上の世代では、慣れていない人も多く、画面の見え方や操作に違和感を覚えやすくなることが理由といえます。

つまり、縦型広告か横型広告かを検討する際には、ターゲットとする年齢層を考慮する必要があるということです。

ユーザーの視線は、すでに縦に向いている

縦型動画はSNSだけでなく、音楽配信サービスやオンラインショッピング、ニュースアプリなど、あらゆるモバイルコンテンツに広がりを見せています。

特にTikTokやInstagram Reelsのような縦型中心のプラットフォームが成長している中で、ユーザーは縦型での視聴体験を当たり前と感じ始めています。

今後はライブ配信などの、リアルタイム性や没入感を重視する広告領域でも活用が広がっていくでしょう。

この流れを無視せず、広告やコンテンツをユーザーの「日常的な見方」に合わせて最適化することが、大切です。

スマートフォンが主な視聴デバイスになった今、縦型と横型の動画フォーマットをどう使い分けるかは、マーケティングの成果に直結します。

参考文献:Lana Mulier, Hendrik Slabbinck, Iris Vermeir. (2021). This Way Up: The Effectiveness of Mobile Vertical Video Marketing.