FacebookとInstagramで「いいね」と「コメント」を増やす投稿形式

日々SNSを運用していると、同じように作った投稿でも大きな反応が得られるものと、まったく埋もれてしまうものがあると感じることはありませんか。

なぜ写真を使った投稿では手軽に「いいね」が集まる一方で、動画ではコメントが伸びやすいのか。

あるいは、FacebookとInstagramで同じ内容を発信しているのに、ユーザーの反応が大きく異なるのはどうしてなのか。

こうした疑問は多くのウェブ担当者が抱える課題ですが、感覚や経験だけで判断するのは限界があります。

そこで今回は大規模なデータをもとに、プラットフォームやコンテンツの形式がユーザー行動にどのような影響を与えるのかを調べた研究を紹介します。

なぜ投稿形式とプラットフォームが重要なのか

ユーザー行動は「受動」と「能動」に分けられる

SNSでの反応には大きく二つの種類があります。

一つは、いいねや閲覧といった気軽なアクションです。これは受動的なエンゲージメントと呼ばれます。

もう一つは、コメントやシェアなどの行動です。こちらは能動的なエンゲージメントで、より深い関与を意味します。

どちらの行動を増やしたいのかによって、選ぶべきコンテンツ形式やプラットフォームは変わります。

受動的な行動を増やすのか、それとも能動的な行動を促したいのか。目的を明確にすることが第一歩になります。

FacebookとInstagramの利用環境の違い

FacebookとInstagramは似たように見えますが、利用される状況や目的が異なります。

Facebookはデスクトップからの利用も多く、投稿を読む時間が比較的長く取られる傾向があります。そのため、コメントなどの能動的な行動が生まれやすいのです。

一方でInstagramはスマートフォンアプリを中心に利用されており、スクロールしながら気軽に「いいね」を押す行動が一般的です。

そのため、受動的なエンゲージメントがメインになりやすいという違いがあります。

投稿形式による反応の違い

写真投稿は「いいね」を集めやすい

写真は情報量が少なくシンプルなため、流し見しているユーザーの目に止まりやすく、直感的に反応を得やすい形式です。

投稿を見た瞬間に「いいね」を押してもらえる可能性が高く、特にInstagramでは効果的です。認知を広げたいときや、多くの人にまず見てもらいたいときに適しています。

動画投稿は「コメント」を誘発しやすい

動画は動きや音声を伴うため、ユーザーの感情に強く訴えることができます。

ストーリー性を持たせたり、詳しい説明を加えたりすることで、ユーザーが自分の意見を伝えたくなるきっかけを作れます。

その結果、コメントやシェアといった能動的なエンゲージメントにつながるのです。特にFacebookではこうした傾向が顕著に現れます。

最新研究が示す具体的な知見

航空会社の投稿1,000件超を分析

ソーシャルメディアにおける投稿形式とプラットフォームの効果を明らかにするために、ニュージーランドのオークランド大学のハミドレザ・シャバズネザド博士らの研究チームが大規模な調査を行いました。

対象となったのは、ニュージーランド航空とジェットスターの二つの航空会社のFacebookとInstagramでの投稿です。

その数は1,038件にのぼり、1,336,741件のいいねと95,996件のコメントが分析されました。

コンテンツタイプ別の効果

この研究では、投稿の内容を「合理的」「感情的」「取引的」という三つのタイプに分類しました。それぞれのタイプがユーザー行動にどのような影響を与えたのか、結果は次のように示されています。

  • 合理的コンテンツ
    製品の特徴やサービスの説明といった合理的な内容は、コメントを促す効果がある一方で、いいねは減る傾向が見られました。ユーザーが理解や質問をしたくなるものの、軽い反応は得にくいといえます。
  • 感情的コンテンツ
    ユーザーの気持ちに訴える内容は、いいねを増やす上で大きな効果を発揮しました。ただし、コメントに対してはそれほど強い影響は見られませんでした。気軽な共感は得られやすいものの、深い関与を生むとは限らないことが分かります。
  • 取引的コンテンツ
    キャンペーンや割引情報などの取引的な内容は、いいねを集めやすい一方で、コメントに関してはプラットフォームによって結果が異なりました。特にFacebookでは議論や反応を誘いやすいことが確認されています。

実務に活かせるSNS戦略のヒント

「写真×Instagram」で広く認知を獲得

Instagramでは写真投稿が「いいね」を集めやすく、拡散や認知拡大に向いています。ブランドの存在を広く知ってもらいたい段階や、軽い接触を増やす場面で有効です。

「動画×Facebook」で深い関与を生む

Facebookでは動画投稿がコメントを誘発しやすく、ユーザーとの対話や意見交換を活発にします。双方向の関係を築きたい場合や、サービス改善のためのフィードバックを集めたい場面に適しています。

投稿の波及効果も意識する

研究では、一度高いエンゲージメントを獲得した投稿が、その後の投稿にも良い影響を与えることが示されました。

つまり、成功したコンテンツは単体で終わるのではなく、その後の取り組みにも波及効果をもたらします。戦略的に投稿を組み合わせることが成果を積み上げる鍵になります。

SNSアルゴリズムとエンゲージメントの裏側

ここまで紹介してきた研究は、主にユーザー側の反応に着目したものでした。しかし実際のSNS運用では、アルゴリズムの存在も大きな要素になります。

プラットフォームのアルゴリズムは「どの投稿を誰に見せるか」を決める上で、ユーザーの行動を参考にしています。

いいねやコメントといったエンゲージメントは、投稿の価値を示す指標として扱われやすく、数値が高い投稿はより多くの人のタイムラインに表示されやすくなります。

つまり、エンゲージメントを高める工夫は、単にユーザーとのつながりを深めるだけでなく、投稿の露出機会を増やすことにも直結します。

さらに、最近では短時間の集中反応が重要視される傾向があります。投稿直後にどれだけ多くの反応を得られるかが、その後の拡散力を左右することもあるのです。したがって、投稿のタイミングやユーザーがアクティブな時間帯を意識することは欠かせません。

このように、コンテンツの形式やプラットフォームの特性を理解するだけでなく、アルゴリズムの仕組みを考慮することで、戦略の精度はさらに高まります。

研究で得られた知見とアルゴリズムへの理解を組み合わせることが、現代のSNS運用における次の一手になるでしょう。

参考文献:Shahbaznezhad, H., Dolan, R., & Rashidirad, M. (2022). The Role of Social Media Content Format and Platform in Users’ Engagement Behavior. Journal of Interactive Marketing, 53(1), 47-65.