スーパーマーケットなどのお店に行くと音楽が流れていますね。
マーケティングの世界では、音楽を流すかどうかが売上に影響するということが知られています。
実はこのお店で流す音楽なのですが、バース大学のカール・フィリップ・アールボム博士らの研究によると、平日と週末では全く異なる効果が出ることが分かっています。
音楽と売上の関係
博士らの研究によると、平日にスーパーマーケットで音楽を流すと、売上が最大11%増加することが分かりました。
音楽を流した条件下では、買い物客がより多くの商品を購入し、店内での滞在時間が長くなる傾向が観察されています。
その一方、週末に音楽を流しても、流さない場合と比較して売上に有意な差は認められませんでした。
場合によってはわずかにマイナスの影響が見られることもありました。
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平日と週末で異なる理由
なぜこのような違いが生じたのでしょうか?
それは平日と週末で買い物客の心理状態が異なるからです。
平日の買い物客の心理
平日には、多くの買い物客が仕事や家庭の雑務に追われ、精神的なエネルギーが著しく消耗している状態にあります。
この「精神的消耗」は、集中力の低下やストレスの増加を引き起こし、購買意欲も低下させます。
このような状況下で音楽を聴くと、気分がリフレッシュされ、それによって購買意欲が高められると考えられます。
たとえば、軽快なリズムや心地よいメロディーがストレスを緩和し、買い物客の気分を前向きに変えることで、店内での滞在時間が延び、結果として購入量の増加につながるのです。
さらに、平日の中でも、時間帯によって音楽の影響が変わることも分かっています。
夕方以降は一日の仕事や家事で疲れ切った状態の買い物客が増えるため、音楽の効果が特に強く現れるます。
週末の買い物客の心理
一方で、週末の買い物客は最初からリラックスした状態にあり、平日に比べて精神的に余裕があることが多いです。
家族や友人との買い物やレジャーの一環として訪れるケースも多く、買い物行動自体が楽しみとして捉えられる傾向があります。
このため、音楽が気分を改善する効果が薄れ、購買行動への影響も少なくなると考えられます。
むしろ、音楽が環境の「ノイズ」として捉えられ、購買意欲を妨げる可能性すらあるのです。
ワインを売るときは原産国の音楽を流すと良い
今回の研究では、過去に発表された、BGMに関する研究も体系的に分析しています。(メタアナリシスという方法)
それらの結果でも、平日と週末での音楽の効果の違いが統計的に確認されています。
ということで平日と週末で異なる戦略を取ると良いかもしれません。
とはいえ、音楽が流れる日と流れない日があると常連客は違和感を持つのですよね。そこが難しいところです。
それと余談ですが、ワインを販売するときは、その原産国の音楽を流すと売れやすくなるという実験もあった気がします。
フランス産ワインなら、フランスの音楽を、イタリア産ワインならイタリアの音楽を流すということです。
さらに余談ですが、同じ音楽ばかり流していると従業員が疲弊しやすいので注意しましょう。
参考文献:Ahlbom, C.-P., Roggeveen, A. L., Grewal, D., & Nordfält, J. (2023). Understanding How Music Influences Shopping on Weekdays and Weekends.

