ウェブサイトを制作するとき、何色をベースにするのが良いのでしょうか?
打ち合わせでもよく聞かれる質問です。
色が人間の感情に影響を与え、消費行動まで変化させることは、マーケティングや心理学の研究でも判明しています。
サイトの背景色やボタンの色、実店舗であれば壁や什器の色が売上に影響するのです。
購買意欲を高める色は商品によって違う
とはいえ、この色を使えば消費者の購買意欲を高められる!と特定するのは難しいものです。
業種や売る商品、価格帯によって変わるからです。
例えば、赤や黄色はスーパーの安売りの値札でもよく見かける色です。そのため多くの人は「激安」「廉価」というイメージを持っています。
なので、これらの色を基調にサイトを制作すれば、お買い得なイメージを与えられるかもしれません。
しかし、高級品や高額商品を扱っているお店では逆効果となってしまう可能性があります。
「値段も安いけれど品質も悪いのかな?」と思われてしまうこともあるからです。
正しいデータを取得するのは難しい
私も複数のパターンの色で、お問い合わせ件数を比較するテストを行ったことがありますが、結果は業種によってバラバラでした。
というより、大企業でもない限りは短期間で「統計学的に有意差がある」といえるほどのお問い合わせは来ませんから、正しいデータを取得するのは難しいのです。
あくまでも感覚として「こっちの色のほうが効果がある気がする…」といった具合です。
赤と青はどちらが売れるのか?
顧客のABテストの結果を公表するわけにはいきませんので、実験を紹介します。
2018年に学術誌『Journal of Interactive Marketing』に掲載された、台湾の国立中央大学の研究チームの実験です。
この実験では、ネットショップの背景色が消費者心理にどのような影響を与えるか調べています。
デモサイトを作って、背景色が青色のときと赤色のときで比較しました。また輝度を変化させたときの効果も測定しています。
その結果どうなったかというと、青もしくは低輝度の背景色のときのほうが、価格に関係なく購買意欲が高くなることが分かりました。
また、背景色が青のときは、高価格の商品に対して品質が良いと納得感を得ますが、赤や高輝度のときは、品質の良さよりも価格の高さに意識がいってしまうことも分かりました。
なぜ青が購買意欲を高めるのか?
なぜ赤よりも青のほうが消費者心理にプラスの影響を与えたのか、明確な理由は特定できません。
しかし、いくつかの仮説が考えられます。
例えば、青は開放感や静寂と関連しているため、積極的な行動と高級感を感じやすいのに対し、赤は危険や禁止、攻撃性と関連するため、購買意欲を消失させたり、商品に対する批判的感情を持ちやすくする可能性があります。
アリゾナ州立大学などが行った研究でも、暖色系より寒色系の買物環境のほうが快感をもたらすという結果が出ています。
寒色系の方が人間の美的感覚が強くなる、という研究もあります。
また、輝度が低いほうが高品質と評価される理由として、多くのラグジュアリーブランドのイメージカラーや店舗の色が低輝度のものが多いため、その印象が消費者の意識に刷り込まれているという可能性もあります。
色の研究論文は結果がバラバラ
色によって誘発された感情が顧客の購買意欲に影響することは間違いないでしょう。しかし、だからといって赤よりも青のほうが常に勝るとは限りません。
色と人間心理の関係を調べた研究は数多くあり、結果が異なるものも多いのです。
例えば、2008年の呉鳳科技大学の研究では、青よりも赤の背景のほうが人は快感を得やすい、という結果が出ています。
また、哺乳類のメスは生殖可能になると体を赤くしてオスを誘うので、男性は赤いパッケージに惹かれるなどと言われることもあります。(進化心理学の世界のお話ですね)
やはり、購買意欲を高める色はコレだ!と特定するのは難しそうです。
迷ったら自分の好きな色
カラーマーケティングでは、商品のイメージに合っている色を選ぶことが大切だと思います。
高級品であれば落ち着いた色合いのものにし、低価格商品であればヴィヴィッドな色にするなどの使い分けをしましょう。
また、同業他社のホームページを参考にするのも良いでしょう。
例えば、エステサロンであれば、暗く重厚感のある色を使ったサイトが多いことが分かると思います。これは高級感をイメージさせることができるからです。
多くのお店がそういったデザインを採用しているということは、効果が高いということです。
また、自分自身が気に入ることも大切です。ホームページは育てていくものですが、愛着がわかないと放置しっぱなしということにもなりかねないからです。
迷ったら自分の好きな色で良いと思います。
余談ですが、青い食器は食欲を減らす効果があると言われますが、バーゼル大学などの実験によると赤い食器のほうが食べる量は減るという結果が出ています。
ほとんどの国で赤が禁止を意味する標識などに使われているため、赤を見ると無意識に回避行動を取ってしまうことが原因ではないかとされています。
参考文献
・Yi-Ching Hsieh, Hung-Chang Chiu, Yun-Chia Tang, Monle Lee. 2018. Do Colors Change Realities in Online Shopping?
・Chin-Shan Wu, Fei-Fei Cheng, David C.Yen. 2008. The atmospheric factors of online storefront environment design: An empirical experiment in Taiwan.
・Joseph A. Bellizzi, Robert E. Hite. 1992. Environmental Color,Consumer Feelings, and Purchase Likelihood.