Z世代の消費者に対するインフルエンサーマーケティングが逆効果となるとき

近年、インフルエンサーを活用したマーケティングが、多くのブランドによって積極的に行われています。

特に、Z世代を主な顧客とする企業にとって、SNSを活用したインフルエンサーマーケティングは重要な施策です。

なぜなら、Z世代はインフルエンサーからの情報を重視する傾向があるからです。

とはいえ、研究によると「インフルエンサーを使うことが逆効果となるパターン」というのも存在するようです。

それは、ブランドがインフルエンサーを過剰に操作しているように見えるときです。

分かりやすく言うなら、「宣伝しろ」と言われている感が強いときです。

このようなとき、Z世代の消費者はブランドとインフルエンサーの双方に対して悪い印象を持ちます。

インフルエンサーの投稿がZ世代に与える影響

ザビエル・スクール・オブ・ビジネスの研究者が、インフルエンサーの投稿がZ世代の消費者にどのような影響を与えるか調べる実験を行っています。

この実験では、以下の2パターンの条件で消費者の反応を確認しました。

  • 強い操作条件:投稿内にブランド名を明確に表示。商品を強く推奨する内容を記載
  • 弱い操作条件:投稿内の背景にブランド名を控えめに表示。商品を控えめに推奨する内容を記載

これらの投稿を見せて、消費者の評価を分析した結果、強い操作条件ではブランド及びインフルエンサーの双方を避けたがる傾向が見られました。

また、インフルエンサーがブランドから強く操作されていると感じると、怒りの感情もわきやすいことも分かりました。

ブランドによる過度な管理が引き起こす道徳的反発

なぜこのような結果になるのでしょうか?

原因の一つとして、Z世代がインフルエンサーに対して「信頼できる仲間のような存在」でいてくれることを求めていることが挙げられます。

そのため、インフルエンサーの発信内容がブランドによってコントロールされていると感じた場合、これを「道徳的な裏切り」と捉え、否定的な感情を抱くのです。

この否定的な感情は「怒り」として現れ、それが距離を置く行動につながります。

特に、ブランドがインフルエンサーの発信内容を積極的に管理し、商業的なメッセージを前面に押し出していると認識された場合、回避行動が強くなります。

Z世代は「本音の意見」を重視するため、商業目的の広告に見えるような発信をしたインフルエンサーを信頼できない人間と評価するのです。

インフルエンサーの規模による回避行動の違い

今回の実験では、インフルエンサーの規模(フォロワー数)も回避行動に影響することが分かりました。

具体的には、フォロワー数が少ないマイクロインフルエンサーに比べて、フォロワー数が多いマクロインフルエンサーに対して、ブランドからの操作に対する否定的反応が強くなりました。

これは、マクロインフルエンサーの発信には「影響力」と「責任」が伴うと考えられているからです。

Z世代はフォロワー数が多いインフルエンサーに高い信頼性と誠実さを期待し、それに反する行動を取った際には厳しく批判するのです。

このため、マクロインフルエンサーがブランドから過度に管理されていると判断された場合、彼らに対する回避行動が一層強まるのです。

関係の強さが与える影響

消費者とインフルエンサーとの「関係の強さ」も大きな影響を与える要因です。

今回の実験によると、消費者がインフルエンサーと強い関係を築いている場合、ブランドによる過度な操作に対する反発がより強くなることが分かっています。

これは強い関係を持つ消費者は、インフルエンサーを「親しい存在」と捉えており、そのインフルエンサーが商業的な理由で自身の信頼を裏切ったと感じると、失望感や粗末に扱われたという感情が強くなるからです。

その結果、これらの消費者はインフルエンサーや提携ブランドを避けるようになります。

一方、弱い関係を持つ消費者は、このような感情を抱くことが少ないため、回避行動も比較的軽度に留まると考えられます。

ブランドへの示唆

このようなZ世代消費者の回避行動を踏まえると、ブランドはインフルエンサーとの提携において、過度な管理を控えるべきと言えます。

ブランドの押し出したいメッセージを発信させることも重要ですが、インフルエンサー自身の声やスタイルを尊重し、自然な発信を促すことが信頼性を高める鍵となります。

また、インフルエンサーの選定においても、フォロワー数だけに注目するのではなく、インフルエンサーとフォロワーとの関係性を考慮することが重要です。

特にマクロインフルエンサーを起用する際は、より慎重なアプローチが求められます。ブランド管理が強すぎると、かえって消費者からの反発を招く可能性が高いからです。

参考文献:Debasis Pradhan, Abhisek Kuanr, et al. (2023). Influencer marketing: When and why gen Z consumers avoid influencers and endorsed brands.