SNSリクルーティング!採用活動の成功に必要な2つの要素

企業の採用活動において、SNSリクルーティングは重要な手段の一つとなっています。

背景には、人材不足や求職者側の企業選びに対する目線の変化があります。

給与や待遇だけでなく、職場の雰囲気や人間関係、働きがいなど、より「企業内部のリアル」を知りたいと考える求職者が増えてきました。

特に若年層の応募者にとっては、SNS上で得られる情報が企業選びの大きな判断材料となっており、採用ブランディングの一環としてSNSの戦略的運用が重視されています。

従来の求人広告や企業説明会に加え、InstagramやX(旧Twitter)、Facebook、そしてTikTokなどのプラットフォームを通じて、企業は自社の魅力を発信し、求職者との接点を築くことは、もはや当たり前なのです。

とはいえ、「何を、どう伝えるべきか」に明確な答えを持てずに悩んでいる企業も少なくありません。

ただ情報を並べればよいわけではなく、かといってカジュアルすぎても信頼性に欠ける印象を与えてしまう可能性があります。

そこで今回は、SNSリクルーティングにおいて、どのようなことに重点を置いて発信すれば良いかを解説します。

SNSリクルーティングにおける「情報量×親しみやすさ」

企業がSNSどのような伝え方をすれば、求職者に魅力的に映るのか検証した、ゲント大学のマリーケ・カルペンティエル博士らの実験があります。

この実験では、SNS上に架空の企業アカウントを作成し、その投稿を見た参加者の反応を調べました。実験対象は大学生と社会人です。

SNSの投稿文は下記の4パターンを作成しました。

  • 情報量が多い×親しみやすさ有り
  • 情報量が多い×親しみやすい無し
  • 情報量が少ない×親しみやすさ有り
  • 情報量が少ない×親しみやすい無し

ここでいう情報量の多さとは、仕事内容や選考プロセスなど、求職者にとって役立つ内容が含まれているかということです。

親しみやさとは、「あなたへ」と語りかける文体や、社員の写真、絵文字などが使われているかということです。

参加者はランダムに1つの投稿を見せられ、その企業にどれくらい魅力を感じたかを評価しました。

SNS投稿の情報量だけでは企業の評価は高まらない

参加者の評価を分析したところまず明らかになったのは、情報量が多い投稿だからといって、それだけで企業の印象が良くなるわけではないということです。

色々な内容が書かれていたとしても、その情報が無機質で一方的に伝えられている場合、求職者の心には響かないのです。

逆に、同じ情報が親しみやすい文言で表現されているときは、企業に対する魅力の評価が大きく高まりました。

つまり、情報量や分かりやすさだけでなく、その「伝え方」が非常に重要であるということです。

だからといって、親しみやすさだけに頼った投稿も、あまり意味はありませんでした。

フレンドリーな文体や表現を用いていても、中身が薄い場合はそれほどプラスの効果は出なかったのです。

求職者は、単に雰囲気が良さそうというだけではなく、自分にとって有益な情報を求めているということです。

【注意】SNSの使用目的によって持たれる印象が変わる

今回の実験では、普段SNSをどのような目的で使用しているかということも聞き取っています。

具体的には、「情報収集を目的とする人」と、「交流を目的として使う人」との違いに着目しました。

その結果、情報収集を目的とする人は、当然ですが情報の多い投稿を好む傾向にありました。しかし、それほど大きな効果ではありませんでした。

むしろ注意すべきは、SNSに交流を目的として使っていない人です。

このような人達にとっては、親しみやすさのある投稿がむしろ逆効果となるケースがありました。

なぜなら、馴れ馴れしすぎる文体や演出が、軽薄さや不誠実さとして受け取られてしまうことがあるからです。

SNSは求職者との最初の接点となる主要チャネル

研究では、参加者の大多数が企業のSNSを日常的に閲覧し、求人情報や企業の雰囲気を把握する手段として活用していることも示されています。

たとえば、WeChatユーザーのうち、85%が企業アカウントをフォローしており、その半数以上が実際に企業の投稿に目を通していると回答しています。

つまり、SNSはすでに採用活動の「周辺ツール」ではなく、求職者との最初の接点となる「主要チャネル」のひとつへと変化しているのです。

このような状況において、企業が発信するSNSコンテンツは、単なる広報の一環ではなく、「ブランドの分身」であり、「職場の第一印象」を形作る重要な役割を担っています。

企業の文化や価値観、日々の空気感は、求職者にとって大きな判断材料となり、応募への意思決定に直接影響を及ぼします。

もちろん、すべての求職者に同じトーンやスタイルが響くわけではありません。

過剰な演出や馴れ馴れしさがマイナス評価につながる可能性もあります。

ですので、自社のターゲットとなる層がどのような価値観を持ち、どのような情報に魅力を感じるのかを見極めながら、投稿の内容や語り方を調整していくことが大切です。

参考文献:Marieke Carpentier, Greet Van Hoye, Qingxiong Weng. (2019). Social Media Recruitment: Communication Characteristics and Sought Gratifications.