Google広告などのネット広告のクリック率(CTR)を上げたいなら、広告文にポジティブなキーワードを入れると良さそうです。
そうすることで、閲覧者は広告を疑いにくくなり、クリックする確率が高まる、という研究が出ています。
ポジティブな気分になるとクリック率が上がる
検索キーワードと広告クリック率を調べた、ジョージア大学のサラ・C・ホイットリー博士らの研究があります。
この研究では、大手検索エンジンからランダムに抽出した約5,000万件の検索クエリを分析しました。
その中から「楽しい」「幸せ」「ワクワク」といったポジティブな言葉を含むクエリを特定し、それらがどのように広告クリック率に影響するかを調査しました。
例えば、「楽しいハワイ旅行」で検索された場合と「長いハワイ旅行」で検索された場合では、広告のクリック率が変わるのかということを調べたのです。
その結果、ポジティブな言葉を含むクエリの広告クリック率が約9%、中立的なクエリの広告クリック率は約7%となりました。
「楽しい」などの言葉を含めて検索されたときの方が、有意に高いクリック率を示したのです。
つまり、閲覧者はポジティブな気分になっている時ほど、広告をクリックする確率が高くなるということです。
(※なぜ検索ワードからの広告クリック率が分かるかというと、検索エンジンプラットフォームと秘密保持契約を結びデータを提供してもらっているからです)
ポジティブな気分が「説得知識」を低下させる
なぜ、ポジティブな気分が広告のクリック率に影響するのでしょうか?
これには「説得知識(Persuasion Knowledge)」が関係しています。
「説得知識」とは消費者が広告やキャンペーンを「自分に何か売りつけるもの」と認識し、それに基づいて広告を評価するための知識やスキルのことです。
たとえば、過剰な宣伝や誇張表現を見抜き、「本当に必要なものかどうか?」を冷静に判断する能力です。
説得知識が働くと、消費者は広告に対して懐疑的になり、売手の意図を見透かそうとするため、広告効果が低下します。
実は、この説得知識はポジティブな気分のときに、低下する傾向があるのです。
なぜなら、ポジティブな気分のとき、人は複雑な情報を深く考えず、直感的かつ表面的に情報を処理するようになるからです。
この「浅い情報処理」の状態では、広告に対して「これは売り込みだ」と気づきにくくなり、警戒心も低下するので、クリックしやすくなるということです。
広告のクリック率を高めるために出稿時に意識すべきこと
当然ですが、広告主の側がユーザーの検索キーワードを操作することはできません。
しかし、表示される広告の文言にポジティブなキーワードを散りばめることで、クリック率を高める効果は期待できます。
また、効果的にクリックさせるためには、ユーザーが広告を「単なる売り込み」と捉えないような自然な表現やデザインが求められます。
広告が露骨だとユーザーは「説得知識」を働かせて警戒心を抱き、クリック率が下がる可能性があります。
これを避けるためには、有益な情報や魅力的な提案があると感じさせるフレーズを入れることが必要です。それだけでなく、視覚的にも感情を刺激する画像等を積極的に活用しましょう。
こういった施策により、ユーザーとの感情的な結びつきを強化し、広告に対するポジティブな印象を高めることができます。
加えて、消費者の感情状態に応じて広告を最適化することも重要です。
例えば、連休前のように、ユーザーがポジティブな感情を抱きやすいタイミングで広告を出すことで、クリック率を高めることが可能になります。
このように、ユーザーの心理や感情を考慮したターゲティング戦略を設計することで、広告のクリック率を向上させられます。
参考文献:Whitley, S. C., Chakravarty, A., & Wang, P. (2025). Positive Emotions During Search Engine Use: How You Feel Impacts What You Search for and Click On.