マーケティングファネルに沿ってSNS施策を最適化!UGCとFGCの効果を徹底解説

SNSを活用したマーケティングは、もはや一部の先進的な企業だけが行う特別な施策ではなく、あらゆる業種・業態にとって不可欠な取り組みとなっています。

多くの企業が、自社の公式アカウントを通じて日々情報を発信し、消費者との接点を築こうとしています。

そこで注意しておきたいのが、企業自身が制作・発信する投稿、いわゆるFirm-Generated Content(FGC)と、一般のユーザーが自発的に投稿するUser-Generated Content(UGC)の違いです。

FGCはブランドの世界観や商品の魅力を正確に伝えやすく、企業の意図を反映しやすい一方で、ユーザーからの信頼度や共感性には限界があるとされています。

一方、UGCは、実際の使用感や口コミを通じて第三者の視点が得られるため、説得力や信頼性が高いという利点があります。

さらに、UGCとFGCのどちらが有効かは、マーケティングファネルの各ステージ、つまり認知、検討、購入意図、そして満足といった段階ごとに、変わってきます。

この段階ごとの影響の違いを知っておくと、SNSを活用したマーケティングをより効果的に行うことができます。

マーケティングファネルとは

マーケティングファネルとは、消費者が商品やサービスを知ってから購入し、満足するまでの一連のプロセスを段階的に表したモデルのことです。

「ファネル(漏斗)」という名前の通り、上から下へと段階が進むにつれて、関心を持つ人の数が絞られていくイメージで考えられています。

一般的には、最初に「認知(Awareness)」という段階があります。ここでは、消費者がブランドや商品を「知る」ことがゴールです。

次に「検討(Consideration)」段階に進み、消費者は選択肢のひとつとしてその商品に興味を持つようになります。

その後、「購入意図(Purchase Intent)」の段階では、「買いたい」という気持ちが明確になります。

そして最終的に「満足(Satisfaction)」の段階に至ると、実際に商品を使った結果として満足を感じたり、再購入や他者への推薦につながったりします。

このように、マーケティングファネルは、企業が消費者の行動を理解し、適切なタイミングで適切なコミュニケーションを行うための基本的な考え方として、広く使われています。

マーケティングファネルの段階ごとに異なるFGCとUGCの影響

マーケティングファネルの各段階ごとに、FGCとUGCのどちらが消費者心理に大きな影響を与えるのか調べた、リヴァプール大学のアナトリー・コリチェフ教授らの研究があります。

この研究では、19のブランドの公式投稿(FGC)およびユーザーによる投稿(UGC)を対象に、約9か月間にわたって日々のデータを収集しました。

対象ブランドは、自動車、飲食、金融、テクノロジーなど、複数の業種にわたっており、特定の業界に偏らないよう幅広く設計されています。

これらの投稿が、消費者のどのような意識や行動に影響を及ぼしているのかを測定するために、研究ではYouGov社が提供するBrandIndexの調査データが活用されました。

このデータは、認知、検討、購入意図、そして満足というマーケティングファネルの各段階について、毎日5,000人規模の消費者パネルから回答を得ており、高い信頼性と網羅性を持っているものです。

SNS上の投稿内容については、企業の投稿であるFGCを、テキスト形式かどうか、感情的にポジティブか中立か、そして画像や動画を含んでいるかといった観点から分類しました。

特に「鮮やかさ(vividness)」という指標は、リッチメディア(画像・動画・リンクなど)をどの程度含んでいるかを測るものとして使われています。

一方、UGCについては、ユーザーによる投稿の量(どれだけの人がブランドについて言及しているか)と、その内容のポジティブさ(感情のトーン)に注目しました。

分析の結果、マーケティングファネルの各段階ごとに次のことが分かりました。

1.認知の段階

認知の段階においては、ユーザー投稿であるUGCの方が企業投稿よりも高い効果を示しました。

これは、FacebookなどのSNSでは、企業の投稿よりもユーザーによる投稿の方が他者に拡散されやすく、より広範なユーザーに届く可能性が高いためです。

UGCは友人や知人の投稿として見られることが多く、信頼されやすいという点も、認知を促進する理由とされています。

2.検討や購入意図の段階

検討や購入意図の段階では、企業の投稿がより強く影響していることが明らかになりました。

特に動画や写真を含むような視覚的に訴えるコンテンツ、つまり「vivid」なFGCが最も効果的であるとされました。

これは、消費者が具体的に商品を比較し始めるタイミングで、企業の専門的な情報が信頼されやすいという心理的な傾向が背景にあると考えられます。

UGCも一定の効果はあるものの、企業が作成した質の高いコンテンツの方が、購入を後押しする説得力があると見なされやすいことが示されました。

3.購入後の満足の段階

購入後の満足という段階においては、UGCの投稿量が大きな影響を与えていることがわかりました。

多くの人がSNSでそのブランドについて話しているという状況は、購入後の消費者に安心感や納得感を与えます。

たとえ投稿の内容にポジティブ・ネガティブのばらつきがあっても、他者の存在や経験を感じ取ることで、自身の判断に対する確信が強まると考えられます。

企業の投稿については、この段階での影響は限定的であり、直接的に満足度を押し上げる効果はあまり見られませんでした。

企業の評判の影響

マーケティングファネルの段階ではありませんが、企業の評判の高さが投稿効果に及ぼす影響についても興味深い結果が出ています。

ブランドの評価が高い企業では、企業投稿の影響力がより強く、特に検討や購入意図に対して良い効果を持っていました。

一方で、評判が低い企業が発信する投稿は、場合によっては逆効果になることも示されました。

たとえば、ポジティブな内容であっても、消費者側がそのブランドに対して十分な信頼を持っていない場合、過剰な宣伝として受け取られる可能性があるのです。

このようなブランドは、まず評判の改善に注力し、そのうえでFGC戦略を展開することが望ましいといえます。

マーケティングファネルの段階によって、UGCとFGCを使い分ける

今回の研究からいえることは、SNSでの発信は「どの段階の消費者に向けて」「どんな種類の投稿を使うか」によって、その効果が大きく変わるということです。

UGCとFGCのどちらが優れているかを一概に決めるのではなく、目的に応じて使い分けることが大切です。

たとえば、ブランドを知ってもらいたいときにはUGC、購入を後押ししたいときにはFGCといった具合です。

さらに研究では、ブランドの評判だけでなく、商品カテゴリーによっても効果が異なることが分かりました。

サービス業ではUGCもFGCも全体的に大きな効果を発揮していました。一方で、耐久財のような高価格商品では、購入前の検討段階で企業による信頼性のある情報が重要になるようです。

このように、業種によって投稿の活用法を調整することも成果を上げるポイントになります。

SNSは変化の早い世界です。だからこそ、感覚や経験だけに頼らず、こうした実証研究の知見を取り入れていくことが、これからのマーケティングには欠かせません。

マーケティングファネルの段階によって、UGCとFGCをうまく使い分けることで、SNSの力をもっと戦略的に引き出すことができるようになるのです。

参考文献:Anatoli Colicev, Ashish Kumar, Peter O’Connor. (2019). Modeling the relationship between firm and user generated content and the stages of the marketing funnel.