中小企業が大手企業に勝つためにアピールすべきことは、製品のタイプによって異なります。
ローテク製品であれば、情熱や職人技をアピールし、ハイテク製品であれば、革新性や技術力をアピールすることです。
なぜなら、消費者はローテク製品では「情熱を持って丁寧に作られたか?」を重視し、ハイテク製品では「高度で革新的な技術を用いて作られたか?」を重視するからです。
消費者は企業規模によって製品に対するイメージを持ってしまっている
そして、消費者は最初から無意識のうちに、企業規模によって、どう作られたかというイメージを持ってしまっています。
大企業が作った製品については、高度な技術を用いて作ったというイメージを持っています。
そのため、高度な技術が求められる製品、例えばスマートフォンや人工知能を搭載したデバイスなどでは、大企業の製品が優れていると評価します。
一方で、中小企業が作った製品には「丁寧に作られた」というイメージを持っています。
そのため、手作業が多く含まれるような製品、例えば工芸品や有機食品などでは、小さな企業の製品がより高品質とみなされます。
反対の視点で見ると、大企業の製品は「情熱を持って丁寧に作られた」とは思われず、中小企業の製品は「高度な技術で作られた」とは思われないということです。
ハイテク産業では規模が大きいほど顧客からの評価が高まる
コーネル大学のケイトリン・ウーリー教授らが、フォーチュン500企業のデータを用いて、企業規模(従業員数や収益)と「ネットプロモータースコア(NPS)」との関係を調査しました。
NPSとは企業や商品、サービスに対する顧客の愛着度を示す値です。顧客が友人や家族にどれくらいおすすめしたいと思うか(推奨度)を数値化したものです。
調査の結果、企業の属する業界が「ローテク」か「ハイテク」かによって、規模とNPSの関係が逆転することが判明しました。
具体的にはローテク産業では規模が大きいほどNPSが低下し、ハイテク産業では規模が大きいほどNPSが上昇する、という相関が見られました。
さきほど説明した通り、大企業は高度な技術を用いて製品を作っているけれど、情熱をもって丁寧には作っていない、という消費者のイメージが影響したのです。
企業規模と製品に対する評価
次に行われた実験では、製品の種類をローテク(例えば普通の椅子や石鹸)とハイテク(スマートチェアやセンサー付きソープディスペンサー)に分類し、それぞれに対して消費者の評価を測定しました。
このとき比較対象の企業情報を操作することで、企業規模に関する消費者の認識を誘導しました。
大企業と思わせたり、中小企業と思わせたということです。
その結果、ローテク製品では中小企業が作った製品のほうが高く評価され、一方でハイテク製品では大企業が作った製品」の評価が上昇することが確認されました。
中小企業は商品説明で何をアピールするべきか?
このような結果となった原因に、実際に高度な技術が用いられたかや、丁寧に作られたかは関係ありません。
消費者が最初から持ってしまっているイメージが原因なのです。
逆にいえば、そのイメージを変えさせれば、中小企業が作るハイテク製品も、消費者から高く評価してもらうことが可能ということです。
そのための具体的な方法として、広告や商品説明のパンフレットにおいて、「高い技術力」や「革新性」といったフレーズを使うことが挙げられます。
また、ローテク製品であっても、「情熱」や「職人技」というフレーズを使うことで、大企業では作れない唯一無二の高付加価値の製品であるというイメージを強めることができるでしょう。
参考文献:Woolley, K., Kupor, D., & Liu, P. J. (2023). Does Company Size Shape Product Quality Inferences? Larger Companies Make Better High-Tech Products, but Smaller Companies Make Better Low-Tech Products.