新しいブランドを投入するときに女性を狙うべき進化的理由

新しいブランドや商品を市場に出すとき、最初にどのターゲットを狙うかはマーケティングにおいて重要なポイントです。

特に、競争が激しい今の時代、いかに効率よくブランドを知ってもらい、初期の売上を伸ばせるかが成功のカギとなります。

実は、最近の研究によると、男性より女性のほうが新しいブランドや未知の商品を、ポジティブに受け入れやすいことが分かってきました。

これは、進化の過程で女性が「新しいものを試すこと」に慣れてきた背景があるためと考えられます。

今回は、女性が未知のブランドに対して持ちやすい心理的な特徴と、それを活かした企業の具体的なマーケティング戦略について説明します。

女性の方が未知のブランドに対する購買意欲が高い

未知のブランドを見たときに、男女でどのように購買意欲が変わるのかを調べたポーランド・ウッチ大学の研究者による実験があります。

この実験では、自動車、ビール、歯磨き粉という3つの商品カテゴリを使いました。

参加者にそれぞれ既知ブランド(例えばトヨタ、カールスバーグ、コルゲート)と未知ブランド(架空ブランド)の広告画像を見せて、買いたい気持ちがどれくらいあるかを答えてもらいました。

その結果、まず、既知ブランドでは「買ってみたい」と思う意欲の強さに男女差はありませんでした。

しかし、未知ブランドでは、女性の方が「買ってみたい」と思う傾向が強いことがわかりました。

次に、ペットフードを評価する実験も行いました。こちらでは、購買意欲の他にそのブランドが信頼できるかも確認しています。

その結果、女性は未知ブランドでも「信頼できる」と感じやすいことが分かりました。

そして、信頼できると感じることでブランドへの好感度が高まり、最終的に「買いたい」という気持ちが強くなることもわかりました。

一方で、男性は未知ブランドに対して女性ほど信頼感を抱かず、購買意欲も高まりませんでした。

なぜ女性は知らないブランドでも「買ってみたい」と思うのか?

なぜ、女性の方が知らないブランドであっても「買ってみたい」と思いやすいのでしょうか?

それには、人類の進化の過程が関係していると考えられます。

昔の人類は、男性は狩りをして動物を追いかけ、女性は木の実や植物を採集することが多かったとされています。

女性は、日々の食料を確保するために、新しい種類の植物や果物を探して試すことが重要でした。もし試すことを避けていたら、家族が食べるものが減ってしまうかもしれないからです。

そのため、未知のものに対しても比較的ポジティブに捉えたり、信頼したりする性質が進化の過程で身についたと考えられています。

一方、男性は狩りで危険を避ける必要があったため、知らないものに対して慎重になる傾向が強かったと言われています。

このような進化の違いから、現代でも女性は未知のブランドや新しい商品に対して「試してみようかな」と思いやすく、男性は「よく分からないからやめておこう」と感じやすい傾向が出やすいと考えられます。

新ブランドを投入する際の戦略

今回の実験から、女性が未知のブランドに対して男性よりも購買意欲が高く、信頼感も抱きやすいことが明らかになりました。

これを踏まえると、企業は新ブランドや新商品の導入時に、ターゲット設定やマーケティング施策を工夫することで効果を最大化できます。以下にそのポイントをまとめます。

1.新ブランドの初期ターゲットに女性を設定する

新しいブランドを市場に投入する際は、まず女性をメインターゲットに設定すると良いです。

新商品のCMやWeb広告のクリエイティブでは、使用シーンを女性の日常生活に寄せる、登場人物を女性にするなど、女性が自分事化しやすい表現を意識します。

また、店頭POPでも「忙しい女性におすすめ」「自分へのご褒美に」など、女性向けメッセージを入れることで、スムーズな初期購買につながります。

2.広告や販促で女性が安心できる要素を強調する

女性は新しいブランドにも前向きですが、実際に購入する際には安全性や品質保証なども重視します。

そのため広告では「国産原料使用」「皮膚科医監修」「オーガニック認証取得」など、客観的で信頼できるデータや証明を記載すると効果的です。

販促物でも「お子様にも安心」「敏感肌の方にも」など、具体的な安心ポイントを明記することで、購買行動を後押しできます。

3.新商品キャンペーンや試供品配布は女性中心に展開する

サンプル配布をする場合、女性来店者が多い場所と時間帯に絞って実施すると効果が高まります。

子育て支援施設や料理教室、ヨガスタジオなど女性が集まるコミュニティへのサンプリングも検討してください。

試供品は1回分ではなく複数回試せる内容量にすることで、「使用体感→購入」へつなげやすくなります。

4.SNSマーケティングで女性インフルエンサーを活用する

InstagramやTikTokでは、単に商品紹介を投稿してもらうだけでなく、使い方動画(例えばスキンケアなら朝晩のルーティン動画)、ビフォーアフター投稿、Q&Aライブ配信など、フォロワーの疑問や不安を解消できる内容にすることが重要です。

また、マイクロインフルエンサー(フォロワー1~3万人程度)を複数起用すると、よりリアルで親近感のある口コミが拡散し、未知のブランドへの信頼感が高まります。

新ブランドへのワクワク感はSNSで波及しやすい

ここまで説明したように、女性は新しいブランドや未知の商品に、ポジティブな感情を抱きやすく、購買意欲も高まりやすいことが分かりました。

この傾向を活かすことで、企業は新商品の市場投入をよりスムーズに進めることができます。

また、女性が新しいブランドに対して感じる「ワクワク感」や「試してみたい」という気持ちは、SNSや口コミを通じて他の消費者にも波及しやすいという特徴があります。

そのため、企業は、女性がその商品を誰かに話したくなるようなストーリー性や、シェアしたくなるデザイン・コンセプトを設計することも重要です。

これから新ブランドや新商品を市場に出そうと考えている企業は、女性の心理的特徴やライフスタイルに合わせて戦略を組み立て、持続的なブランド成長につなげていきましょう。

参考文献:Malgorzata Karpinska-Krakowiak. (2021). Women are more likely to buy unknown brands than men: The effects of gender and known versus unknown brands on purchase intentions.