ヴィレヴァンのポップを真似して効果がある商品とない商品

ヴィレッジヴァンガード(ヴィレヴァン)というお店をご存じでしょうか?

面白い商品がたくさん売っている雑貨屋です。(正式には書店らしいですが)

群馬や埼玉のイオンモールにもよく入ってますね。

このヴィレヴァンの特徴といえば、店内の至るところに貼られた手書きのポップです。面白いフレーズで商品の魅力を伝えています。

それを見て「つい買ってしまう」というお客さんもいるでしょう。

小売店の経営者やマーケティング担当者であれば、自社でも真似してみようと思うかもしれません。

しかし、ヴィレヴァンのポップと同じように、楽しいフレーズを書いたからといって、必ずしも消費者の購買意欲を高めるとは限りません。

こういった型破りなフレーズが効果を発揮する商品と、しない商品があるのです。

結論を先にいうと、衝動的に買うことのある商品では効果がありますが、そうでない商品ではあまり効果がないということです。

ヴィレヴァンはオモチャやお菓子、本など衝動的に買うこともある商品をたくさん売っていますから、型破りなメッセージのポップが効果を発揮しているのです。

これが昼休みに食べるためのお弁当のように、事前に買うことが計画された商品では効果が出にくいのです。

商品パッケージに掲載された型破りな文言の効果

トリプラ大学のマニッシュ・ダス博士らが、商品パッケージに掲載する文言が、消費者の購買意欲にどのような影響を与えるか調べる実験を行っています。

この実験では、ポテトチップスやクッキーといった「衝動買いされやすい商品」と、調理済みの食品のような「計画的に買われる商品」を選び、それぞれに型破りな文言をつけた場合と、普通の文言をつけた場合の効果を調べました。

  • 型破りな文言の例:「おいしいパリパリスナック」
  • 普通の文言の例:「おいしいチップス入り」

実験の結果、衝動買いされやすいポテトチップスやクッキーでは、型破りな文言が購入意欲を大きく高めることがわかりました。

特にユニークで楽しさを感じさせる文言を見た消費者は、通常よりも衝動的に「買ってみたい」と感じる傾向が強かったのです。

一方、計画的に購入されることが多い調理済みの食品では、型破りな文言を使っても特に効果は見られませんでした。

なぜ計画的に買われる商品では効果が出ないのか?

なぜ、商品の特性によって結果に違いが出たのでしょうか?

それは、衝動的に買うものは好奇心に従って判断するのに対し、計画的に買うものは好奇心よりも理性に従って判断するからです。

消費者はユニークで普通と違うものを目にすると「これは何だろう?」と興味を持ちます。

たとえば、「おいしいチップス入り」という普通の文言よりも、「おいしいパリパリスナック」という文言のほうが、「どんな味だろう?」「何が普通と違うのだろう?」という好奇心を刺激します。

この好奇心が購買意欲を高めてくれるのです。

しかし、事前に買うことを決めている商品では「商品の価格」「品質」「使い道」「栄養価」といった客観的な情報を重視します。

そのため、たとえユニークで目を引くメッセージがあっても、実際の購買にはつながりにくいということです。

商品カテゴリに応じてメッセージを工夫することが重要

以上のように、ユニークな文言は感情を刺激することで衝動的な購入を促す効果がありますが、理性的な判断が優先される計画的な購入には効果が薄いことがわかります。

そのため、マーケティング戦略においては、商品カテゴリに応じてメッセージを工夫することが重要です。

衝動買いされやすいスナック菓子などにはユニークなメッセージが効果的ですが、計画的に買われる食品や日用品では信頼感や実用性を強調するメッセージが求められます。

参考文献:Manish Das, M. S. Balaji, et al. (2023). Being unconventional: The impact of unconventional packaging messages on impulsive purchases.